第12話マーリーナ・アルカディアの悩み

「私の名前はマーリーナ・アルカディアです!友人からはマーリーと呼ばれてるから親しみを持ってそう呼んでね!」

と、木の陰に隠れながら顔だけ出して元気いっぱいに答えてくる。

そんなピンクと水色が入り混じったポニーテールの少女を唖然とした様子で眺めるアーティス。

「あぁ、取り敢えず木から出てこいよ」

先程まで引き締まってした表情を緩め、少女に手招きする。


「そんなに木に隠れなくたってマーリーに危害を加えないよ」

正直なところビビられても困る。

そもそも、マーリーがここに来たこと自体、予測できない不可抗力だ。

学校の壁とかぶっ壊したし、ここはさっさと立ち去りたいな。


アーティスがそんな事を考えていると木の陰からヒョッコリと出てきた可愛らしい少女が訝しげにアーティスの方へ近づいてくる。

「僕の名前はアーティス。アーティス・パーティだ。君はこんな時間にどうしてこんなところに?」

現在いる場所は日が沈み始めると木影のせいもあり人通りの少ない暗い場所となる。

学園の敷地内を突き抜ける舗装された道からも離れている為なおのことだ。

しかも女の子一人で。

「あ、私は・・・スキルを、ね」

と、バツが悪そうに視線を落とし言う少女の言葉にアーティスは素早く反応する。

「スキル・・・、もしかしてスキルの練習?」

と、一瞬顎に手を添え考えるポーズを取りすぐさま答える。

「どきぃ!」

と、胸を押さえわざとらしく少女が反応する。

図星の様だ。

それについアーティスは笑ってしまいそうになるが堪える。

「と、ところでアーティス君はどうして発狂していたの?」

と、少し怯えた様子で伺ってくるマーリーに空かさず

「発狂してねぇよ!!」

とツッコミを入れる。

ただ、本当の事は言いたくない。

それを誰かに言うとアーティス本人が認めたくない無い敗けを仕方なかったと諦めている様に感じるから。

「まぁ・・・色々あったんだよ」

と、明らかにテンションを下げるアーティスに流石に察したのかマーリーもシュンッとする。

「ほら、もう戻ろう。寮まで送るから」

と、即座にムードを変えるべくマーリーを横切り催促する。

「待ってください・・・」

その声は先ほどとは打って変わり静かで落ち着いた雰囲気の声であった。

「ごめんなさい!アーティス君の表情で察したつもりだけど、その上でお願いがあります!」

歩み始めていた足を止め、マーリーの方を向く。

その視線は真剣でジッとアーティスを見つめていた。

「木を切ったり、凄いスキルを持っていて、私なんかとは一緒にされたく無いかも知れないけど・・・」


スキル如きでそんな上下決めないけど・・・


アーティスは少しションボリする。

だが、モジモジと頬を染めるマーリーを見て不思議そうに

「どうした?」

と急かす。

「わ、私にスキルを教えて下さい!」

マーリーのそんな言葉に、柄に無く

「はぁ?!」

と、アーティスは素っ頓狂な声を上げた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

復讐心を殺すために 不可式ヨハネ @Bluebird0228

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る