14。 始まり

14。 始まり




 玉精霊たちを引き連れてリビングにやって来た我はキッチンで料理している母ちゃんを見つける。


「母ちゃんご飯まだー?」


 とりあえず母ちゃんにご飯がまだか聞いてみる。


「あら、しぜんちゃん。 ご飯はもうすぐ出来るからテレビでも見て待っててね」


「ういー」


『ういー』


 どうやらまだご飯は出来てないらしい。

 玉精霊たちが適当に返事をした我の真似をしている。

 こいつら本当に子供っぽいよな。

 まぁ精霊だけど子供……といえる感じなんだろ。


 我はテーブルの上のリモコンを取ってからソファーに座って電源がついているテレビを見る。


《うぅん! 美味しい!!》


 テレビでは何処かのお店の料理を食べてコメントしているタレントが映っていた。

 我はこういうの興味ないんだよなぁ。

 という訳でリモコンでチャンネルを変える。


《おおっと! 危なぁい!!》


 次にテレビに映ったのは、アイドルやタレント、芸人などが様々なアトラクションをする番組だった。

 これも興味ないなぁ。

 でも……。


『すごい』『はしってる』『あーあ』


 玉精霊たちがテレビをすごい食い付くように見ているからこのままにしておこう。



 我と玉精霊たちはしばらくテレビを見ていた。

 まぁ我は殆ど見えなかったけどな。

 それで20分程経った頃。


「しぜんちゃーん、ご飯出来たわよー」


 母ちゃんの声が聞こえてきた。

 どうやらご飯が出来たようだ。

 玉精霊たちはテレビに夢中だし、今の内にご飯を食べてしまおう。

 そう考えた我はソファーから立ち上がってテーブルの方に行き、椅子に座った。

 すると、すぐに母ちゃんが我の前に作った料理を持ってきて置く。


 今日の夕飯はご飯と焼き魚に味噌汁か。

 さっさと食べてしまおうと我は箸を取り、味噌汁を食べ始める。

 アサリか何かの貝の出汁がきいてる……多分だけど。

 我は料理とかよく分からない。

 無言で味噌汁を食べ終わった我は次にご飯と焼き魚を食べようとする。

 そこでいつの間にか玉精霊たちがテーブルの上でヨダレを垂らすながらこちらを見ていた。


『じー』『だらー』


 くそっ。

 間に合わなかったか。

 テレビを見ていればいいのに。

 我のご飯なのになぁ。

 そう思いつつも玉精霊たちの要求には抗えない。


 結局、半分以上が玉精霊たちのお腹に消えていった。

 あー、物足りない。

 はぁ。

 つい玉精霊を甘やかしてしまう我自身が歯痒い。


『おなかいっぱいー』『もう動けない』


 幸せそうにしやがって。

 まぁいいか。


 ぐーたらしている玉精霊たちを横目に食べ終わった食器を我は流しに持っていく。


「あら、もう食べ終わったの?」


「あ、うん」


 母ちゃんにそう言われる。

 そんなに早かっただろうか?

 自分ではよく分からん。


「じゃあお風呂に入っちゃったら?」


 どうやらもうお風呂に入れるらしい。

 どうしよう。


「早く入った方が楽よ」


 うーん。

 じゃあさっさと入っちゃうか。


「分かった」


 お風呂に入ることに決めた我はお風呂場に向かう。

 すると、テーブルの上でぐーたらしていた玉精霊たちがフヨフヨと飛んで後を付いてくる。

 お前ら動けなかったんじゃなかったのかよ。

 適当な奴らだなぁ。

 と思いつつ我はリビングを出た。


 脱衣所に着いた我は服を脱ごうとして気が付く。

 もしかしてだけど、我に付いてきたってことは玉精霊たちも一緒にお風呂に入るのか?

 それは……どうなんだ?


 少し考えたけど、まぁこいつら見た目小人だしいいか。

 と思った我は服を脱いで裸になった。

 すると、玉精霊たちも着ている小さな服を次々に脱ぎだす。


『ぬいだー』『はだかー』


 こいつらの服脱げたんだな。

 ちなみに玉精霊が脱いだ服は消えていった。


「よし、入るぞー」


『おー』


 このままだと寒いし、とっとと風呂場に入る。

 風呂場ではシャワーから冷たい水が出て一部の玉精霊たちが頭から被って震えたのを見て慌てたり、玉精霊たちを洗ってやるとくすぐったいのか身体をよじらせるのを見て笑ったり、浴槽に玉精霊たちがプカプカと浮いていて入る場所がなくて困りつつもその光景が可愛いと思ったりして、とても慌ただしかった。


「はぁー。 お前らもう出るぞー」


『あいー』


 慌ただしかった入浴を終えて我は玉精霊たちと共に風呂場から出る。


『お待ちしていました』


 脱衣所にはルシルと見知らぬ精霊が一緒に居た。


 我は固まる。

 ルシルは精霊といえど、どう見ても女性型だ。

 しかも大人。

 つまり女。

 我裸。

 見られた。

 恥ずかしい。

 見られてからそう思うまで僅か0.01秒。


「……ぎゃあああああああああああああ!!!」


 我は思いっきり悲鳴を上げた。


『どうしたんですか!?』


『なになにー?』『てきー?』


 混乱する脱衣所。

 もう訳が分からなかった。


 その後は悲鳴を聞いた母ちゃんが脱衣所に突撃してきたり、近所の人が心配で訪ねてきたり、ルシルが周囲を警戒しだしたりで色々大変だった。


 これが精霊の王となった神保 しぜんの最初の日常。

 精霊たちとの生活の始まりだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ニートが精霊王になっちゃったけど働かない リブラプカ @Purizuma

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ