13。 玉精霊たちはゲームが出来る?

13。 玉精霊たちはゲームが出来る?




 やがて30分近い動画が終わりを迎える。


《完走した感想ですが(激ウマギャグ)》


 お、恒例の完走した感想だ。

 この大して面白くないギャグもRTA動画ではお馴染み。

 何でなんだろうな。


 そして動画が終わった。


『おもしろー』『もっとみたい』


「そうだなー」


 通常のRTAだけの動画だと見てて飽きる可能性があるんだけど、5252動画のRTA動画は投稿者が面白おかしくRTAを解説をしているから見てて楽しいんだよなー。

 これがつい見てしまう理由の一つ。


「ルシルはどうだった?」


『大変興味深いものでした。 ありがとうございます』


 どうやらルシルも楽しんでくれたようだ。

 そこで画面を見ていた玉精霊たちが何故か我の所に集まってくる。


「どうした?」


『せいれうおうさまー』『ぼくたちも』『あーるてぃーえーやりたい』


 なんと、玉精霊たちが自分たちもRTAをやりたいと言ってきたのだ。

 これには我も驚いた。

 見ててやりたくなったのか。


「うーん。 RTAやるだけなら家にあるゲームを使って簡単なタイマーで出来ると思うけど……」


『おぉー』


「でも、家にはゲームを録画する機械が無いから記録を残せないしRTAサイトにも書き込めない。 それにさっきの動画みたいに投稿も出来ないけどいいの?」


 そう、我が家にはゲームを録画する環境が無いのだ。

 だから、正式な記録として残せない。

 それに動画サイトに投稿も出来ない。

 それだとRTAとしてはあまり意味ないんじゃないか?


『ぜんぜんいい』『だいじょうぶ』『やりたいだけー』


 玉精霊たちはRTAが出来れば別に良いようだ。

 どうやら動画投稿がしたい訳じゃないらしい。


「今は母ちゃん居るから、今度RTAやろうか」


 家にはリビングにしかテレビがないから、そこでしかゲーム出来ないんだよなぁ。

 まさか母ちゃんの前で玉精霊たちにゲームをやらせる訳にはいかないし。

 ん?

 待てよ?

 そもそも玉精霊たちはゲームが出来るのか?


『わぁい!』


 我は全身で喜びを表す玉精霊たちを見る。

 玉精霊たちの身体はコントローラーと同じか、下手したらそれ以下の大きさだ。

 その身体でコントローラーを操作出来るのか?

 こういう時はルシルに聞いてみるのが良いのではないだろうか。

 という訳でルシルに聞いてみる。


「なあ?」


『なんですか?』


「玉精霊たちってゲーム出来るのか? コントローラーを操作出来るようには見えないんだけど」


『んー大丈夫だと思いますよ』


 本当か?

 コントローラーを操作する玉精霊が想像出来ないぞ。


『とりあえず、好きにやらせてみたらどうです?』


「分かったよ」


 まぁルシルがそう言うならいいか。

 今度、玉精霊たちに好きにやらせてみよう。

 それで出来なかったら何か方法を考えればいいよな。


 その後は我とルシルと玉精霊たちでランキングの幾つかのゲーム動画を見ていった。



「……あ、もうこんな時間だ」


 みんなで何本目かの動画を見終わった後にふと時間を確認するともう19時になろうとしていた。

 やっぱり動画を見ていると時間の流れが速いなぁ。


『なになに?』『どうしたのー?』


「今日はもう動画終わりな」


『えー』『なんでー?』『もっとみたい』


「だめだ。 続きは明日」


『はー』『わかった』


 玉精霊たちは渋々といった感じに答えた。

 なんだか項垂れているが、そんな姿も玉精霊だと可愛く見える。


「もうすぐご飯なんだよ」


 そう。

 家は19時過ぎから大体夕飯の時間なのだ。

 遅れるとちょっと問題があるのでキッチリ食べに行く。


『ごはんー』


 そこで玉精霊たちがご飯と聞いて復活した。

 どんだけご飯好きなんだよ。

 まぁ元気になったなら良いか。

 我は動画サイトを閉じてパソコンの電源を落とすと、机から離れて立ち上がって伸びをする。


「んんっーあぁ」


 つい声が出てしまった。

 そんな我を玉精霊たちが真似している。


『んー』『あぁ』


 可愛いけど、できればやめてくれ。

 とりあえず下に行くか。


「あ、ルシルはどうする?」


『私は姿を消していますね』


「じゃあまた後で」


『はい、また』


 そう言ってルシルは周囲に溶けるように姿を消した。


「よし、下に行くか」


 ルシルが消えるのを見てから我は動き出した。

 その我に玉精霊たちが相変わらず付いて来る。


「お前らも来るのか? 待っててもいいぞ」


『いくー』『ごはん』『おいしい』『たべる』


 結局、付いて来るらしい。

 ……はっ!

 よく聞いたらこいつら完全に我のご飯食べる気でいるじゃねーか!

 完全に人間のご飯の味を覚えてしまっている。

 野生動物かよ!?

 くそぅ。

 また殆ど玉精霊たちにご飯を食われるのは嫌だぞ。


『きらきらー』


 しかし、玉精霊たちの期待したキラキラした顔を無視するのは辛い……。


「しょうがない……行くぞ」


『わぁー』


 なんとか我が必要な分は確保しなくては。

 我はそう思いながら玉精霊たちを引き連れて、部屋の扉を開けて階段を下り、一階に下りた。

 ……大丈夫かなぁ。

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