マジカル・エンジニアリング

@ogurin0410

第1話 入学

 この国、デルナング王国は、魔法と科学の進歩が大きな王国で、色んな魔法具を産み出して栄えた国です。

 私、アルメリア・レッキスは、この国で生まれたせいか、小さい頃からそういう魔法具が好きでした。お話に出てくるような大きな機械も、魔物との戦いや、戦争で使われる武器も含めて、どれもこれも大好きだったんです。

 勉強はあまり得意では無かったのですが、自分で色んな機械を作っていたおかげか、運良く王立魔法学校の魔法工学部の入学試験に合格しました!

「ついに、ついにこの日が来たんですね!」

 そして、今日はその入学式なんです!


 指定された部屋に入ると、周りは殆どが男子生徒でした。…まあそうですよね、いくら魔法と名前についていても、工学なのですから。仕方ありません。

「皆、おはよう。まずは、入学おめでとう。これから、ここにいる仲間と共に研鑽するように。申し遅れたが、私は学部長のジェームズ・ワトソンだ。」

 スラっとした…と言うよりはやつれた見た目の男性が、私達新入生に挨拶を行いました。おそらく自己紹介とかはないようです。女子生徒が何人いるか確認したかったのですが、まあ仕方ないですね。ぼちぼち把握していきましょうか。

「さて、知っているとは思うが、魔法工学とは、魔力を源に様々な反応を起こす機巧を造ったり、魔法薬を造ったりする学問だ。この学校では3つの学科に分かれていることも言うまでもないだろうが、それぞれの説明もしておこう。改造・発明学科。長いから今後は、改発科と呼ぶ。名前の通り。製薬学科。名前の通り。大規模魔法工学科。これは大魔工と呼ぶ。まあこれも名前の通りか。」

 かなり適当な…ゲフンゲフン。おおらかな先生のようです。

 実際受験する時に学科は決めますから、知らない人は居ないはずです。ちなみに私は、先生の略称に従うと改発学科です。大魔工も少し惹かれたのですが、そちらにはおそらく頭の方が足りませんから、受けてもダメでしたね。

 …物理的な理論とかはわかりますよ?ただ、その他の魔物の特性だとか、都市学とかはからっきしなので、結局は第一志望だったこの学科がちょうど良かったんですよね。試験が面接だけでしたから。

「今日はこれで解散とする。明日は学科の方で何かしら行うから、改発科は第3研究所、製薬科は第4研究所、大魔工は専用開発堂に集合するように。じゃあ、すぐに寮に向かうようにしろよ、解散。」

 これで入学式も終りですね。明日からの日々が楽しみで仕方がないです!ああ、今日は眠れるでしょうか!


 女子寮は2人部屋で、基本的に学部は被らないように設定されるようです。同じな方が色々楽だと思うのですが…。まあ指定されたことに従う他ありませんし、他の勉強の話を聞くのも面白いですよね。理解できるかどうかは別として。

「すみません、魔法工学部のアルメリア・レッキスですが、私は何号室ですか?」

「はいはい、魔工学のアルメリアさんね、えーと、213号ね。卒業まで部屋は変わらないけど、鍵はどうしてもの時以外は私に預けてね。持ち出す時も私に一声かけてちょうだいね、めんどくさいことになるから。」

「はい!分かりました!」

 どうやらこの学校の教職員の方々はめんどくさがり…ゲフンゲフン。手短に済ませたい方が多いようです。

「同室の子はもう来てるよ。鍵はその子が持ってるから、もう行きな。」

「はい、ありがとうございます! 」

「あ、言い忘れてたけど、同室の子が学内でも寮内でもパートナーだから、仲良くなっときなね。」

「はい、分かりました!」

 寮母さんの前を去り、213番の部屋を目指しました。廊下には誰一人として居ませんでしたが、扉の向から楽しげな声が聞こえたので、とりあえず一安心です。

 213番に着くと、ドアには鍵がかかっていました。…用心な方なのか、ただ単に一人が好きな方なのかどちらでしょうか…。

「あの、すみません。開けてもらえませんか?同室の者です。」

 ノックをして話しかけると、中からどったんばったんと物音が。何やら慌てている様子です。

 ガチャりとドアが開いて、漆黒の美しい髪をした少女がお顔を覗かせました。この辺りでは珍しい色ですね。

「あ、あの…ごめんね。いつもの癖で、鍵閉めちゃった…。」

「いえいえ、お気になさらず。癖なんて誰にでもあるものですから、謝る必要もありませんよ!」

 このまま立って話をするというのも何だかおかしな話でしたので、中に入って、元から用意されていたソファに座って、まだ扉の前でオドオドしている彼女を隣に呼びました。

「私は魔法工学部、改造・発明学科のアルメリア・レッキスと申します。呼び方とかはそちらにお任せ致しますね。趣味は色々ありますが、本を読むのが特に好きですね。あなたの事も教えてくださいますか?」

 だいぶ人見知りなのか、自己紹介をしても中々目を合わせてくれません。ちょっと不安になってしまいますね。

「わ、私は、ブラーヴ・オニキス…です。戦闘学部の、戦闘魔法学科です…。本当なら、魔法学部の魔法理論学科に行きたかったんだけどね、そっちは…ダメだったから、別日程だったこっちに何とか滑り込めたの…。趣味は、私も読書だよ。」

「じゃあ、ブラーヴ。ひとつだけ質問してもいいですか?」

「え、あ、は、はい」

「戦闘学って、何するんですか…?」

「えっとね、戦闘時において絶対に必要となる知識を埋め込んで、どんな相手にでもきちんと戦えるようにする…だったよ。」

「なるほど、ちゃんとした学問なんですね」

『学』と付いていますからちゃんとした学問なのでしょうが、イマイチ何するのか検討が付きませんでしたので、ようやく腑に落ちた感じでした。

「でも、殆どが実技だったの…」

「…まあ、やはりそうですよねー。あ、そうだ。魔法理論でしたら、魔法工学でもかなり重要な部分ですし、私でよければお教えしますよ?」

 そう言うと、ブラーヴの顔がパァっと花が咲いたような顔になりました。人と目を合わせて話すことが苦手なだけで、自己表現は豊かなようです。

「い、いいの!?」

「ええ、もちろんです。あの、その代わりと言っては何ですが…」

「なぁに!?なんでも言ってね!」

「家事全般が全くダメなので…料理をお願いしたいんです…」

 私とて女子としてどうかと思いますけどね?できないことはない…はずなんですが…何故失敗するんですかね?

「あ、それは任せて。むしろこっちからお願いしたかったんだ。」

 おお、何という偶然!出来る人とパートナーになれて嬉しいですね!

 寮なのに寮母さんがご飯を用意してくれないのも変な話ではありますが、まあ賃貸だと思って納得しましょう。

「では、今日からよろしくお願いしますね、ブラーヴ。」

「うん、よろしくね。アルメリア!」

「そう言えば、ようやく普通に話してくれるようになりましたね?」

 そう言うと、顔色を悪くして、ソファから飛び降りてしまいました。つくづく可愛らしい方ですね。

「ごごごご、ごめんなさい!」

「いえ、嬉しいですから。むしろ元に戻らないでくださいよ!」

 明日からも、こんなにも楽しい場所に居られる。こんなに幸せなこと、今までの人生でもしかしたら初めてかもしれません。



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