第7話
「無くて七癖」
聞きたいことは山ほどあるが何から話せばいいのかわからないし何を話せばいいのかもわからなくなっていた。
すると三月の方から口を開いた。
「話って、二葉ちゃんの事だよね…?」
やっぱり察していたようだ
僕はコクリと頷きゴクリと生唾を飲んだあと、鑑定書を手渡した。
「二葉の実の親が僕だった、時期的に三月しか体の関係は持ってない」
三月は俯きながらぽつりぽつりと話を始めた。
音信不通になる前に妊娠が発覚していた事。
就活中、負担になりたくないので一人で産むことを決意した事。
育児のイロハもわからずどうしていいかもわからなくて育児ノイローゼで頭がおかしくなっていたこと。
頭の中で何かが切れたような感覚があった後に気が付いたら二葉をコインロッカーに入れて家に帰っていた事。
鍵を無くしたのに気付きすぐにロッカーを見に行くと二葉が居なくなっていて、ずっと探していたこと。
最後に一言「ごめんなさい…」と呟いた。
おそらく僕にだけではなく二葉に対しての謝罪だろう。
僕は何も言えなかった。
ずっと心の中で恨んでいた二葉の両親が今、目の前で向かい合っているのだから。
そしてその相手が最愛の人なのだから。
どうしても責めることが出来ない。
僕が弱いのもあるだろうが、
何より三人で暮らしてからの彼女の行動がちゃんと母親だった事を知っているから。
でも、一つだけ僕は彼女に忘れないでいて欲しかった。
「覚えてるか?久しぶりに俺の家でママを見た時、二葉泣いてたんだぞ?あんなに幼い小さな子が、やっと迎えに来てくれたって泣いてたんだぞ。」
僕は涙が出そうなのを我慢して、続けた。
「僕は三月を絶対に許さない。
許したらそこで終わりだからだ。
自分のした事をちゃんと覚えておいてほしい。
子供は大人になっても俺達の子供なんだから、もう手放すような事はするなよ。」
三月は泣いた。
気付いたら僕も泣いていた。
限界だったんだろう。
大人になって初めて二人で声を出して泣いた。
その声で目が覚めた二葉もビックリして泣いていた。
夜遅くまで三人で泣いて、泣き疲れたのか気付いたら朝になっていた。
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あれから2年が経った。
僕はアルバイトをしながら就職活動をして正社員で雇ってくれるところを見つけた。
二葉ももう3歳になる。
そしてお姉ちゃんになる。
僕達は今教会にいる。
僕はカッチリとしたタキシード。
二葉は世界一可愛いお洋服。
三月は世界一綺麗なウエディングドレス。
お腹の中の新しい生命を待っていたかのように、少し遅めのバージンロードを四人で歩く。
この幸せの道がずっと続きますように。
終わり
コインロッカーの天使 大神 椿生 @tsubaki0518
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