第2話・法次(ノリツグ)
大人になってから判った事だが、法次(ノリツグ)は「普通」の天才だったように思う。
この場合の普通とは、一般的な―――という意味ではない。
彼は「普通」をこなす天才なのである。
このままだと非常に判り辛いので説明を付け足すと、彼はどんな環境下でも「中の上」の実力を発揮できる才能を持っているのである。
彼は自分とは違う意味での天才だった。
小学校の時―――彼は自分と同じくらいの成績だったが、二人の曲線は中学で差が出始め、気付けば自分との学力の差は歴然となった。
この時は何処か、自分は優越感を持って彼に接していた部分があったのは間違いない。しかし、今はその事を後悔している。
彼は「普通」をやる天才だった。
中学でも中の上で、そこそこ評判の良い公立高校に進学。
高校の成績も中の上で、大学も地元の公立大に進んだ。
大学での成績も中の上だったようで、特に躓く事もなくすんなりと地元の中小企業に就職を決めてしまった。
まぁこれは時世が良かったというのもあるだろうが、ノリツグには妙な感性というか、他とは違う不思議な魅力があった。何がどう凄いとか、そういう形容が出来ない辺りが中の上って感じなのだが、とにかくそういう所が色々な人に魅力的に映ったのだろう、彼があっさりと就職を決めた時も何ら不思議はなかった。
恐らくノリツグは就職した会社内でも中の上の成果を残し、適度に評価されている事だろう。周囲の過度な期待を背負う事もなく、飄々と日々の暮らしを楽しんでいる筈だ。
彼は去年、会社で知り合った女性と結婚して、幸せな生活を送っている。
忙しくて結婚式には行けなかったが、送られてきた写真で見た時はちょっと笑みがこぼれた。新婦は中の下くらいの美人さんだった。
彼に会うのは大学で上京して以来だが、元気でやっているだろうか。
「今日も疲れたな・・・。」
地下鉄を乗り継ぎ、足早に東京駅へ。
さぁ、急ごう。広島に着く頃はもう夜中だな。
今日は実家でゆっくりと休んで、ノリツグとは明日色々と話そう。
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