天才と凡才
ポージィ
第1話・英次(エージ)
同級生の英次(エージ)は産まれつきの天才で、それこそ恐ろしい位に頭が良かった。鳶が鷹を産む・・・ではないが、彼の家庭はどこにでもある普通の家庭。ご両親も医者だの実業家だのといった特別な職業の人ではなかった。
エージの才能は中学生くらいから開花し、高校は私立の進学校に入学。大学は当然の様に東京大学理科三類に現役合格し、地元では「神童」と呼ばれたらしい。
エージの稀有な才能は、東大に行ってからも燦然と輝いていたようだ。
彼は医学部に入り、首席で卒業―――意外だったのは、彼は医師として花形ともいえる研究職ではなく、東大病院で実務臨床の道に進んだ事だ。
大学病院での医師の業務はそれはもう相当に過酷だと聞いている。
・・・いやはや、あのエージがお医者様とはね。
将来医者になって誰かを救いたいだの、そんな事を云う風には見えなかったのだけれど。
* * *
大晦日も差し迫った師走の候、エージから連絡があった。
「今年の暮れは俺も帰れそうじゃけぇ、飲みに行こうや。」
「おお、久しぶりじゃのう。元気なん?」
「まぁボチボチじゃね。」
「よいよ、相変わらず忙しそうじゃのぅ。いつ頃帰れそうなん?」
「ほうじゃのぅ、多分12月28日の夜に新幹線で帰るわ。」
「ほいじゃあ飲むなら12月29日か。まぁ29ならまだ店もやっとるじゃろ。手配しとくわ。」
「おう、頼むわ。」
極々短いやり取りで交わされる約束。
天才のあいつが東京でどんな経験をしてきたのか、実に楽しみだ。
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