第3話・斜陽
12月29日、広島市―――エージとノリツグは昼の内に再会すると、久々の地元を見て回りたいと話したエージの要望に応えて、ノリツグが運転する車でダラダラと市内を周遊した。
エージは学生時分は定期的に帰省はしていたものの、病院で勤め始めてからは殆ど広島には帰っていなかった。
高校生の時まで見ていた広島とは随分と印象が違う。
カープの優勝に沸く街からは活気があふれ、その熱気は何処か怖い位だ。外国人観光客が増えた影響もあるのか、市内の雰囲気も随分と変わった。
三角州らしい、いくつもの川―――久々に走った広島市街は街の構造にこそ歴史を感じるものの、確実に変化を遂げている。カープとズムスタの影響は顕著だ。
一方で、緑井から八木にかけての地区は少し斜陽感のある雰囲気を感じる。
「そういえば、あの土砂崩れはホンマに大変だったみたいじゃの。」
「おぉ・・・俺の同級生の知り合いに、亡くなった人もおったわ。」
車の窓越しに神妙な顔で山を見るエージを見て、ノリツグは肩をすくめた。
「お前も医者の顔んなったの。」
「はっは、何で上から目線や。」
楽しいドライブの時間は過ぎ、冬至を越えたばかりの日はあっという間に西に沈んでしまった。
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