もちろん純粋な記憶が自ら語り出すということは無く、それは過去=記憶と現在=意識の情動が往還することによって語られていくものです。
わたしたちはこの作品で、現在が過去に手を触れ思い出を語り出すのを見ることになるのですが、かつてその様をとある哲学者はこう語りました。
「結晶化」という言葉で。
さて、この作品の中で純粋なる記憶は、「おたく」として核となります。
その結晶核に触れた媒質が結晶化していくように、記憶はその様々な情動を語られる作品群とともに結晶化させてゆきます。
結晶核(「薔薇の蕾」)は、現在のときに触れて情動とともに自らを物語り、その様は作品群が結晶化し広げられていく様のようです。
わたしたちはきっといつもこころの底、深い夢の奥底に密やかに息づく薔薇の蕾を持ち、それはときとしておたくとしての顔を持つこともあるのでしょう。
わたしたちはある日夢の底でその蕾にそっと息をかけ、語り出すのをみるのです。
ハッキリ言って、私のまわりにはオタクだらけだ。
アニメ、ゲーム、鉄道など見事に各種揃っている。
例えば『けいおん!』ブームの頃、放映30分後には
某掲示板に「ロケ地」の特定記事が上げられており、
その仕事の速さにバイト仲間と共に驚嘆していたら、
鉄オタでもある別の仲間が一言、「その神、オレ」
カラオケに行ったら我々、一部のロックを除いては
ほぼアニソンしか歌いませんよ。あと、音ゲー曲か。
そんなふうだから、『割れオタに閉じオタ』には、
ひたすらリスペクト。すっごく理想的。楽しそう。
今となっては原本が失われてしまった貴重な情報も
ここに大切にメモライズされているんだろうと思う。
思い出話のパートだけでなく、今の推し氏の生記録も、
きっと推し氏の将来にとって貴重な情報であるはずで。
旦那様へ、ご家族へ、特撮へ、推し氏へ、仲間たちへ。
作者から「大好き」への沢山の愛が綴られたエッセイ。
丁寧でリズムのよい文章は、押し付けがましい所がなく、
ユーモアがあってウィットに富んで、とてもお茶目だ。
これからもご家族で楽しいオタクライフを送って下さい!
熱くて優しい愛に溢れたイベントレポもお待ちしてます!
華やかなりしバブル時代の黄昏期、婚約者たちは銃を抱えて突然変異亀の映画を見に有楽町へ向かう。
おそらく同年代な私には「見える」レベルの情景から始まるこのお話、オタクな女子が大学でオタクになった男子とご家族になられる過程を綴ったエッセイです。
地の文の軽妙な語り口に引き込まれ、気づけば12月3日の最新更新分まで読まされていました。
普段は重厚な歴史・時代系の作品を書かれていらっしゃる著者さん、文章力の確かさは折り紙つきですね。
そして現在公開されている旦那様との恋物語がね! はっきり言いますよ、オタ者からしたら理想の恋愛ものなんです。
実際大変なこともあるのでしょうけど、物語に必要なエピソードが実に素敵な形で演出されていて、読んでいる私はただただ悔しい!
また始まったばかりですが、この後おふたりがご家族になられ、お子様もまたエリートオタクになられていく様が描かれる模様。更新を待ちつつ公開分を楽しみましょう。
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=髙橋 剛)