体の半分は人間、半分はキトン(猫)――つまり猫の半獣の一味が構成するミーティアキトノという一団が活躍する物語です。
彼らの一員である少年アビスは、男爵夫人であるという少女を救ったことから、他の団員たちと共に何やら陰謀に巻き込まれていきます。
細部まで世界設定が作り込まれ、それを無理なく物語の展開とともに披露していく手際が、たいへんお上手です。
特筆すべきは、単なる舞台説明だけでなく、キャラクターが送る日常の細かな点までしっかりと描かれていることです。
ミーティアキトノや貴族、軍人やその家族など、様々な人々の生活というものが手触りを持って伝わって来て、作品世界を豊かにしています。
それがキャラクター一人一人の個性にも繋がっていて、小さな癖や話し方、会話の距離感などから人柄が伺える筆致は素晴らしいです。
特に主人公のアビスの、それなりの正義感を持ちながらも決してそれを押し付けない、他人の立場や感情へ思いを馳せ、自身を省みることのできる人柄にとても好感を覚えました。
時にそれが優柔不断に見えてしまうところも、ちょうど良いいじられ方に繋がっていて、作品にコミカルな味を加えています。
少女の抱える秘密と、それに関係するのだろう人生に対して虚ろな態度もとても気になり、物語に吸引力を与えています。