醤油ラーメンと餃子

Jack-indoorwolf

第1話醤油ラーメンと餃子

 すべてが終わった俺をベッドに残して、はるかは村役場へ引越しの手続きに出かけた。彼女は疲れ果てたあとしぼり出した笑顔で「元気だしなよ」と言って春の息吹いぶきあふれる田舎街へと消えた。


 俺はトイレに立った以外はずっとベットで毛布に包まれ天井の幾何学模様きかがくもよう凝視ぎょうししていた。幾何学模様がバラの花に見えてきて、やっと俺はのこのこ起き出して有意義ゆういぎな呼吸をし始めた。

 とりあえず新居しんきょゆかにそのまま置かれたテレビのスウィッチを入れ、一通ひととうりり見ることができるチャンネルをチェックして消した。そのあと小さなラジオを入れたがこの街の放送局の周波数がわからず、消し、スマホの電源を入れた。スマホのアプリを半分開いて30分ほど時間をつぶして閉じた。


 ベッドに逆戻りして過去を思い出しそうになってあわてて脳内をからっぽにして、救いを求めるように体を毛布にからめながら天井のバラの花を見る。そんなことを繰り返しながら昼になってしまった。このまま死んでもいいかなと思ったとき玄関のチャイムがった。


 あわててジーンズをき、まだ片付かないままの段ボール箱をかき分け、さっき遥が出て行ったドアを開けると加齢臭かれいしゅうがする小汚こぎたない白いエプロンをしたおっさんが岡持おかもちを持って立っていた。


「はい、お待ちどうさま」

 おっさんからうながされ岡持ちをあずかり、リビングで中身を確認すると醤油しょうゆラーメンと餃子ぎょうざだった。

「料金はもうもらってますよ」

 荷物を軽くしたおっさんは加齢臭を残して去って行った。


 スマホがぶるるとなる。チェックすると遥からLineが届いていた。

ーーー出前注文しておいた。ここにはUberEATSないからね。

 

「何だよ、引越し蕎麦そばじゃないのかよ」

 そこで俺は遥の実家がラーメン屋なのを思い出す。

 俺は醤油とニンニクの香りを嗅ぐと急におなかいていることに気がついた。

 胃のあたりがグウと鳴った。

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醤油ラーメンと餃子 Jack-indoorwolf @jun-diabolo-13

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