後編

「ああ、それは秀の推測通りだよ」

とヒィ先輩は、顔を撫でながら言った。

 ダギーは、高等部の図書館で、司書の代理でカウンターにいるヒィ先輩に話を聴いている。

「2人のエリーは同一人物だったのが、サタースウェイト教授の研究と、警察の捜査をつきあわせたらわかったんだって」

 ダギーは

(僕より猫の血が濃く出てるのに、普通に話せてうらやましいにゃあ)

と、話と関係ないことを思った。

 ヒィ先輩は、頭がもろに猫そのままで、ダギーは頭についた猫耳しか猫じゃない、他の部分は人間である。

 しかし、こと口から発する言葉は逆で、ヒィ先輩は訛りなく能弁おしゃべりで、ダギーは訛りがひどく、それを隠そうとして気が付いたら無口しずかになった。

 ダギーの物思いとは関係なく、ヒィ先輩は話を続ける。

「まあ、彼女はマイクによくわからない無色透明で胃に残らない遅効性の毒物を飲まされて、その後飛び降り自殺に見せかけようと、大学棟の屋上から投げられた。

で、

時使いの指輪の力が発動したらしく、時空タイム跳躍スリップしたんだ。

そのまま、頭にぶつかって、シメオンはお陀仏、虐げられていた民は大喝采。

彼女は神様として祭られ、そうして忘れ去られた」

 ヒィ先輩はふぅと一息つくと、ダギーにこう聞いた。

「で、続けて良い?」

「え、はい」

(話長いの自分でも気にしてるんにゃ)

「で、話は今に戻って、彼女は発掘されて、そのチームの中に彼を見つけた。

あちらさんも不安だったんだな、サタースウェイト教授にナイショで、深夜に研究室に来た。

そこで、彼女は彼の首を絞めて、何ごともなかったように、また眠りについた」

「……なんか、見てきたように言いますね」

と、ダギーは不思議そうに、首を傾げて聞いた。

「そりゃそうだ、

「……はにゃっ?」

「時使いの指輪のもう1つの機能らしくてね、たまに起きれるらしい。

最近は、高等部の売店の焼きそばパンがお好みだそうで……」




 やがて、高等部の七不思議に『焼きそばパンを買いに来る女性のミイラ』という話ができたそうな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

彼の災難、彼女の幸運 今村広樹 @yono

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ