第9話


―これは様々な戦いが始まる前の話。

この日は土曜日で学校が休みで、いたって平和な朝だった。


「なぁ、しずk......」


「なに?お兄ちゃん?」


言い切るより前に突然目の前に現れる俺の妹、雫。

最初こそは驚いたがもう慣れた日常である。


「頼みがあるんだけど聞いてくれるか?」


「分かったよ!お兄ちゃんの部屋にあるリモコンの電池が切れたから電池を買って欲しいんだよね。分かったよ」


「......なんで知ってる?」


お願いする時に内容も聞かず、分かったよ!

とか言うのはラノベのテンプレだが、お願いする前に内容までもをピタリと当てるのは今まであっただろうか。

まぁ以心伝心できるので不便だと思ったことはないが......俺も感覚が鈍ってきているのか?


「まぁ、合ってるんだけど、もし暇だったら一緒に行かない?」


「もちろん!予定なんかあるわけ......」


ピ......ブチッ


「え?今の雫の携帯の着信音だよね?もしかして遊びの誘いとか約束とかしてんじゃないの?」


「違うよー、やだなぁ」


と笑ってはいる雫は目の色を失っている。

やっぱり約束でもしてたのかな、雫の友達よすまない。


「それから電池買いに行くついでにパンツも買いに行かない?」


雫がとんでもないことを口にする。

パンツってことは俺が男子禁制のあの場所に入らないといけないという未来しか見えない。


「い、いやぁ、そこは雫だけで行ってくれると助かるんだけど......」


「あ、もしかして私のだと思った?違うよ〜、お兄ちゃんのパンツだよ!確かもう3枚しか残ってないよね?買っておかないとダメなんじゃない?」


「ちょっと待ってなさい」


「はーい!」


慌てて自分の部屋に行く。

タンスを開けて出てきたパンツは2枚。

今履いてるのを含めると3枚。

え?

部屋は自分で掃除するし、雫は部屋に入っていないはずだけど......ダメだ深く考えようとすると頭が痛くなる。


「いっつも何やってんだか」


思わずため息がこぼれた。




雫サイド


朝、居間に行くとお兄ちゃんがいた。

まぁ家には沢山の監視カメラがあるし何処にいるかは知ってるんだけどね。


「なぁ、しずk......」


「なに?お兄ちゃん?」


いけない。

お兄ちゃんと話すのが嬉しすぎてつい瞬間的に答えてしまう。

お兄ちゃんの発する言葉は一字一句逃さずに聞きたいのに。


「頼みがあるんだけど聞いてくれる?」


「分かったよ!お兄ちゃんの部屋にあるリモコンの電池が切れたから電池を買って欲しいんだよね。分かったよ」


おっとまたしてもだ。

お兄ちゃんの頼み事ならなんでも聞くし、長年一緒にいるので何を頼もうとしているのかも分かる。

妹の特権というやつだ。

だとしてもなんでお兄ちゃんの部屋のリモコンの電池がないって分かったって?

昨日部屋に行ったからだよ☆

お兄ちゃんってば鈍感さんなのに警戒心が強くてバレないようにするの大変なんだからね!


「......なんで知ってる?」


疑わしそうな顔しちゃって、薄々気づいているのに私に何も言わない可愛いお兄ちゃん!


「まぁ、合ってるんだけど、もし暇だったら一緒に行かない?」


なんて幸せなんだろう!

お兄ちゃんが買い物デートに私を誘ってくれている!

昨日、友達と遊ぶ約束してたけどそんなのどうでもいいや!

お兄ちゃんより大事なものなんて私にはないからね。


「もちろん!予定なんかあるわけ......」


ピ......ブチッ


「え?今の雫の携帯の着信音だよね?もしかして遊びの誘いとか約束とかしてんじゃないの?」


「違うよー、やだなぁ」


タイミング悪いなぁ、お兄ちゃんは気にしてないみたいだからいいけど。

もし気を使ってこの話がなくなったらあの子どうしてやろうかな?

......そうだ!

そういえばお兄ちゃんのタンスを見た時にパンツがなくなってたなぁ。

私が持ってってる分もあるんだけどその分はちゃんとお兄ちゃんの欲しいものを買ったりご飯を奢っているのでセーフ!


「それから電池買いに行くついでにパンツも買いに行かない?」


「い、いやぁ、そこは雫だけで行ってくれると助かるんだけど......」


お兄ちゃんったらなんで顔赤らめてるの?

私的には可愛すぎてキュン死しそうなんだけど!?

もしかして私のと勘違いしちゃったのかな?

そこも含めてお兄ちゃんの全てが愛おしいよ!


「あ、もしかして私のだと思った?違うよ〜、お兄ちゃんのパンツだよ!確かもう3枚しか残ってないよね?買っておかないとダメなんじゃない?」


「ちょっと待ってなさい」


「はーい!」


ドタドタと慌ただしく自分の部屋に戻るお兄ちゃん。

全く朝から忙しいなぁ。

そうだ!さっきまでお兄ちゃんが座ってた椅子の味を確かめなくっちゃ!


「ペロペロ......んんぅ、最っ高!♪」


さてと!

楽しんことだし、しばらくお兄ちゃんも戻ってこないだろうから自分の部屋にでも戻るか。

階段を登り、雫とお兄ちゃんの部屋♥と書いてあるプレート(雫の部屋)のついたドアを潜りいつもの椅子に座る。


「はぁ、お兄ちゃんったら自分の部屋の椅子が新品に変えられてること気づいてないのかな?そういうところは鈍感だよねぇ。そのおかげでこんなにもコレクションできるんだけどね!」


まぁ予想通りと言うかなんというか雫の部屋は奏多一色だった。

皆様のご想像にお任せしますが。


「モニターに映るお兄ちゃんかっこいい♪あ、タンス調べてる!もしかして私のさっきの会話でなにか悟って調べに行ったんだろうなぁ〜」


しかし、ワクワクする。

こんなにワクワクするのはやっぱりお兄ちゃんと一緒に出かけるからだろう!


「ずっと一緒だよ、お兄ちゃん♥」

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