第8話
葉瑠乃を実の姉、近衛 菜々子師匠に任された俺はルンルンしながら車に乗り、家路に着いていた。
ふとスマホの画面を見ると未読メッセージが99+になっており、雫と琴音から1000通を超えるそれぞれ違うメッセージが送られていた。
その二人のメッセージに
「今用事が終わったから帰るところだよ」
とだけ返し、セバスチャンに「少し急いで」とだけ言った。
「ただい......」
「「おかえり (ッス)〜!!!」」
「......おかえり......なさい」
俺の言葉を遮りドタバタと駆け寄る3人。
さっきまでの緊張感とはえらい違いだが、この空間が俺が1番リラックスできる空間でもある。
「奏多。お疲れ様です」
「ああ、悪いな、家のこと任せちまって」
「これぐらい大したことないですよ。さて!まだパーティの途中でしたし、今度は葉瑠乃さんも入れた5人でパーティを再開しましょう!」
どうやら俺が帰ってくるまでの間に皆葉瑠乃と仲良くなったのだろう。
葉瑠乃もワクワクしている様子だった。
「よし!まだまだ料理作るぞ!!幸い明日は休みだし、みんなうちに泊まってパーティだ!」
「「「「おー!!!」」」」
みんな笑顔で拳をあげる。
やっぱりみんなといるとすごく幸せだと思う。
俺はこの幸せを壊したくない。
何があったかを聞いてこないのは優しさの1つだと思う。
だから、これから起こり得る事にこいつらを絶対に巻き込まないと固く誓い台所に向かった。
どんちゃん騒ぎの後、各々部屋に行き、俺も色々あって疲れたのですぐに寝ることにした。
寝床につきしばらくするとコンコンとドアがノックされ、ドアを開けると雫が枕を持って立っていた。
「お兄ちゃん。今日は私と一緒に寝る約束だったよね?」
「......あ」
そういえば朝そんなこと言ってたな......。
忙しすぎて今の今まで忘れてしまっていた。
「あ、って言うことはお兄ちゃん忘れてたね!?愛しい妹との添い寝だっていうのに!?」
「ごめんごめん。布団出そうか?」
「添い寝って言ったの聞こえてました?」
「いや流石にそれは色々ダメだろ」
添い寝なんてしたら雫が暴走するに決まってる。
何が起こるかは考えたくもないが......。
「よろしくお願いしまぁぁぁす!!!」
雫はどこかで聞いたようなセリフと共にお手本のような綺麗な土下座で頼んでくる。
「土下座!?......分かったよ!今日は色々世話になったし、特別だからな?」
「ありがと、お兄ちゃん!!!」
さっきまでプリプリしていたのに表情をころっと変えて笑顔になる雫。
そしてもぞもぞと布団の中に入ってくると、俺の腕に抱きつき耳元で
「お兄ちゃんおやすみ......大好き」
と囁いてくる。
あれ?
なんか大人しいな。
俺の思っているようなことは無いみたいだ。
まぁそのおかげで今日はぐっすりと眠れそうだ。
もうすぐ眠りそうな時、不意に雫が顔をぺちぺちと叩いてくる。
眠かったので反応せずにいると、
「......寝てるみたいだね。それじゃあいっただっきまーす」
「何もいただかなくていいし、何を頂くつもりだ!」
「わわっ!起きてたの?お兄ちゃん!」
こんなことされそうになったらそりゃ誰でも起きるに決まってる。
しかもすぐ近くに雫の顔がある。
あっぶな!
もう数秒遅かったら行っちゃってたよ!
さすが俺の危険察知能力!
「そんな事するなら俺だけ別の布団で寝るからな」
「ご勘弁を!わたくしめにお慈悲を!!!どうか寛大なる処置を!!!」
「い、いや、そこまでして頼まなくてもいいけど。でも今度こんな事したら本当に部屋移動するからな」
「ははぁ〜ありがたき幸せ!」
「良きにはからえ!」
なんていう茶番を繰り広げていると、ガチャッという音と共に、2人目の来客者が部屋に入ってきた。
「......奏多さん。話したいことが......あるのですが......」
「ん?何?とりあえずそこに座って」
ベッドから降りて、部屋の電気をつける。
「あ、ありがとう......ございます。でもこの話は奏多さんだけとしたいのですが......」
「お兄ちゃんと私は一心同体!お兄ちゃんの秘密は私の秘密だからね!」
いや、ドヤ顔でいうことじゃないからね。
雫は嫌でも動かまいと布団にくるまり、雫ガードを展開していた。
「それでは......すいません!」
「うわっ、眩しっ!」
葉瑠乃の声と共に俺の部屋を眩しい光が包む。
しばらくして光は収まったが特にどこにも変化はないようだ。
「ん?なぜ僕が奏多の部屋にいるのですか?というか、なぜ僕が雫さんの姿に?」
「は、はぁ!?」
雫ガードをしている雫は外見、声共に完全に雫なのだが、喋り方や仕草が完全にりょうになっていた。
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