余録:夜空の穴

 太古の昔、太陽は何時でも空に輝いていた。

 天空を司る神によって太陽は使われ、正しく世界を照らしていた。


 しかし、いつのことだろう。

 天空の神の手伝いをしていた小さき神が、輝く太陽の半分を空に溢してしまった。


 輝きは細かく広く散らばり、空の半分が闇へと変わった。


 厳格な天空の神は、小さき神に落とした全ての光を拾い集めろと命じた。


 数え切れないほどの欠片に割れた太陽は、とても一人では集められそうにない。

 それでも小さき神は必死に輝きを拾い続ける。


 見かねた大地の神が小さき神に提案する。

 闇の空に穴を掘り、あちら側から光を取り入れるのです。

 太陽には劣るが、闇の空を見渡せるだけの輝きはできるでしょう。


 小さき神は必死に穴を掘った。

 しかし闇の空は重く固く。

 少し掘った程度では元に戻ってしまう。

 それでも小さき神は、闇の空に穴を掘り続ける。


 太陽が世界を15回照らす間に、小さき神は空の穴を掘り終わる。

 丸く掘られた空の穴は、あちら側に繋がり輝きを放つ。

 その代償に小さき神は、力尽き倒れてしまう。

 小さき神が倒れている間に、空の穴は15回空に現れ、その度に徐々に塞がる。


 目を覚ました小さき神は、また一から闇の空に穴を掘る仕事に戻る。


 それから今日まで、延々と小さき神の穴掘りは続けれている。


 こうして、世界に昼と夜が頒かたれた。

 事の初めに散らばった太陽の輝きは星となり、空の穴は月となった。


 これが、夜の空に穴を掘る小さき神が『夜天の洞』と呼ばれる所以である。

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泰磨学園 只今星組待機中 石狩晴海 @akihato

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