第2話 「中学生の殺人鬼」
僕は学校の帰り道に嫌な殺気を感じた。謎の緊張感が僕を襲う。気のせいにしてさっさと帰りたいけど、気が紛れてそれどころじゃない。
思い切って後ろを振り返っても誰もいないし何も無い。車すら通ってないのが唯一の恐怖だった。
向き直り、また歩き出す。未だに消えない殺気。
仕方ない、走ろう。
僕は全力で走り始めた。すると、誰かが後ろの曲り角から走って出てきた。
横目で見てみると、中学生くらいの女子だった。しかも普通の女子中学生ではない。その女子は、血まみれで、金属バットを持っている。女子の目からは、今まで感じていたのと同じ殺気を放っていた。
なんでか知らないけど殺されそうな気がしたので一目散に逃げる。一体いつまで追いかけてくるのだろうか……。もしかして僕を殺すまで追いかけるつもりなのだろうか……。
もう流石に追いかけてきてないだろうと思い、ちらっと後ろを見てみた。
──誰もいない。
「なんなんだよ……」
僕は息を切らしながら吐き捨てた。
そんなに人に殺気を起こさせるようなことはしてないし、第一あの女子中学生が誰なのかも分からない。なのに、相手は初対面である僕を襲おうとしてきた。気味が悪い。
僕はそのまま家に帰った。
「……ふぅ……」
自分の部屋に入ると、身体の力が抜け、肩に掛けていたカバンと背負っていた楽器ケースがするりと落ちた。一気に緊張の糸が切れた。
「なんだったんだよ……」
僕は窓の外を見つめながら呟いた。
「ただいま〜」
玄関から疲れたような声が聞こえた。姉ちゃんだ。
僕はふっと時計を見ると、もう夜の六時だった。窓の外を見てみると、真っ暗だ。完全に日が短くなっている。
「おかえり」
僕は部屋の外に出て姉ちゃんを出迎えた。
姉ちゃんはかなり疲れきっている。今まで陸上やってたんだ。無理もない。……いや、でも今日はいつもより疲れが大分残っている様子。息も切らしている。まるで帰り道に走ってきたかのように……。まさか……。
「……姉ちゃん、どうしたの……?」
「れ、蓮……帰りに赤いセーター着てて、金属バット持った女の子に会わなかった……?」
予想は的中した。姉ちゃんもあの女子に追いかけられたんだ。
「会った。追いかけてきた」
「やっぱり……! なんかね? 普通に道歩いてたの……そしたら曲がり角から、急にその子が、襲いかかってきてね。全力で逃げてきたよ……ま、余裕だったけどね……」
姉ちゃんは息を切らしながらもドヤ顔をし
た。
「とりあえず部屋で休んだら? 僕ご飯作ってくるから」
「え? いいよぉ〜、蓮も疲れてんでしょ?」
「いや、帰ってきてから大分時間経ってるから大丈夫だよ」
「そお? じゃぁお願いしていい? その間お風呂も入ってくるから」
「分かった」
姉ちゃんはお風呂へ、僕は夕食の支度へとそれぞれ行動にうつった。そういえば何作るか決めてない……。カレーでいいや。
僕は材料を出し、調理に取り掛かった。
ほんとにあの女子中学生なんだったんだ……。今まであんなことなかった筈だしそもそも会ったことがない。何か僕達が知らぬ間にあいつに恨みを買うようなことをしていたのかもしれない……。身に覚えがないけど……。そんなことがずっと頭に残ってしまって料理に集中できない。失敗はしないと思うけど。
「ふぅ〜さっぱりしたぁ〜」
考え事をしながら料理しているうちに姉ちゃんがタオルを首にかけてお風呂から帰ってきた。
「ねぇ。僕達さ、あいつに恨みを買うようなことしたっけ」
「えぇ〜? してないよぉ。覚えてないし……」
「だよね……もう夜は出歩かない方がいいかもね。ないと思うけど」
「うん。あ、ご飯出来てる!」
「あぁ、食べていいよ」
「やったぁ。いただきます!」
僕達はカレーを食べ始めた。このあたりはいつもと変わらない風景なのに、どこかぴりぴりしている。あの女子中学生が出てきてからだ。
「他にも会ったやつがいるかもしれない。健にも聞いてみるよ」
「蓮もそう思う? あたしも友達に聞いてみる」
「でも襲われてたりしたらニュースになってるはず……」
「そうそう。でもないもんね」
「どうも気になる……」
「無茶だけはしないでよ?」
「分かってるって」
ご飯を食べ終わり、姉ちゃんと片付けも終え、僕は二階の部屋に戻った。未だに緊張がほぐれていない。また、ちらっと窓の外を見てみた。まぁ何も無いと思うけど。
僕はそう思っていた。でも、外から異様な視線を感じた。……殺気。恐る恐る窓に近づいて更に外をよく見てみた。家の玄関の近くの電柱に黒い人影。その電柱には蛍光灯が付いていて、最近電気が点いたり点かなかったりしている。最初はただの黒い人影かと思った。けど、電気が一瞬点いた途端正体が分かった。
──あの女子中学生。
その女子中学生はこちらを睨んでいるかのように見えた。いや、睨んでいる。殺気に満ちた瞳をこちらに向けている。
僕は鳥肌が立った。そして慌ててカーテンを閉めた。……朝待ち構えてたらどうしよう……。今ので一気にSAN値(正気度)が削られた……。とりあえず姉ちゃんに報告だ。
僕は階段を走って下りた。
「姉ちゃん!」
「ん? どしたの?」
姉ちゃんはのんびりテレビを見ていた。
「あいつが外に居るんだよ……!」
「え……!?」
「来て……!」
僕は姉ちゃんの手を引っ張って自分の部屋へ駆けた。そして、そっとカーテンを開けた。しかし、先程までいた電柱に誰もいなかった……。
「あれ……」
「蓮疲れてんじゃない?」
「いや、ほんとにいたんだって!」
「わかるよぉ怖かったもんね」
「子供扱いすんな! ……まぁ、朝待ち構えてはいなさそうだし」
「分かった。じゃぁ寝よう! おやすみ!」
そう言って姉ちゃんは部屋を出ていった。僕も寝よう。
翌朝、学校に着いて、教室に入り、自分の席へ座った。
「よう、蓮。おはよ」
いつものように健が声をかけてきた。
「おは。なぁ健」
「ん? どうした?」
「お前、帰り道に赤いセーターを着た女子中学生に会ったりしなかったか?」
健は少し考えると、はっとした。
「会っちゃいないけど、見かけたことらある」
「え、いつ?」
僕は興味を持ち身を乗り出した。そんなこと滅多にないのに自分でもビックリだった。
「ん〜昨日かな……」
「は? 他にも追いかけられてる奴がいたのか?」
「他にもも何も。お前だった」
「え、お前いたのか?」
「いたな。遠く後ろに」
そんな真顔で言わないで貰えないかな腹立つ。
「助けろよ!」
「んなこと言われても助けようがねぇじゃねぇか! 見た時にはもう見えなくなってたんだよ!」
「は!? 逆ギレかよ!」
「お前がキレてきたからだろ! ……はぁ、で、なんで追いかけられてたんだ?」
「知るわけないだろ。寧ろこっちが聞きたい」
「昔にそいつに恨みを買うようなことをしたとか……」
「ねぇよ」
「あれだ、こんな噂がある。この近くは、夜になると殺人鬼が現れるっていう。そいつがどんな奴かは知らねぇけど当てはめてみたら?」
「いや別に殺人は……あ」
僕は嫌なことを思い出してしまった。あいつの服に付いていた赤い染み……。
「有り得るかも……。だって服に血が付いてた」
「おいおいマジかよ……」
流石の健もびびっている。
「じゃぁそいつで間違いないって……」
「まじか……次から気をつけるか……」
「俺もお前が追いかけられてるとこ見たら助けるわ」
「頼む。てかさ、他にもその殺人鬼のこと知ってる奴いるのかな……」
「さぁどうだろうな? 噂では知ってる奴もいるんじゃねぇか? でも噂だからなぁ。信じてない奴もいるかもしれない」
「確かに。不思議なことにニュースにもなってない」
「そうなんだよ。俺も実はそんな噂どうでもよかったんだけど、お前が血塗れの女子に追いかけられてるのを見てはっとしたよ」
他にも、その殺人鬼に対しての疑問が浮かんでくる。もし、その女子が殺人鬼で、人を殺し回ってるのなら、そいつの学校は気づいていないのか? 友達、クラスメイト、教師や学校以外に親も……?
重たい緊張感が、僕達二人の周りだけにほとばしる。もう、しばらく考えたくない。こんなことに悩まされながら学校にいるのか……。いつもなら、早く帰りたいけど、今回は帰りたくない。また襲って来るかもしれない。しかも、今回は殺されるかも……。そんなの御免だ。死にたくない。もうこの際、昨日みたいにダッシュして逃げ切ってやる。
僕はネガティブな思考を巡らせ、しまいには開き直ってしまった。この時の僕は、まともに頭が回ってなかった。健と一緒に帰った方が良いものを。
当たり前のように、何事もなく学校か終わってしまった。実はまだ帰りたくないと思っていた。
「なぁ」
帰りの準備をしていると、健が声をかけてきた。
「なに?」
顔を見上げると、いかにも心配そうな顔をしていた。
「また一人で帰るつもりなのか?」
「そうだけど……?」
「やめとけ。今日は部活ないから、一緒に帰ってやるよ」
「ほんとかよ」
健は時々無理をして嘘をつくときがある。だから今の発言が信じられなかった。
「ほ、ほんとだよ!」
「ほんとは部活あるんじゃないの?」
「ないない。てかそんなことよりまた一人で帰るとあの殺人鬼に出くわすぞ?」
「それは、困る……」
「だろ? ほら、行くぞ」
健は自分のカバンを持った。
「いや、お前も巻き込まれるかもしれない」
「馬鹿一人じゃ危ないだろ」
ダメだ。そうとなればもう止められない。健は自分で決めた事は絶対にやる。そういう奴だ。
僕は深く溜め息をついた。
「どうなっても知らないよ……」
「覚悟の上だ」
何やら気合が入っているようだ。本当に大丈夫なんだろうか。
僕達は教室を出て帰ろうとした。
「待った」
僕はあることを思い出し、教室の扉の前で立ち止まった。
「姉ちゃんが心配だ……」
「お前の姉ちゃん? 今日も部活じゃないのか?」
「確かに姉ちゃんは陸上部で足が速くて殺人鬼からは余裕で逃げてきたけど。やっぱり心配……」
「分かった。じゃぁまず二年教室へ寄り道だな」
何から何まで申し訳ない気がしてきた。
「ごめん」
「は? 何謝ってんだよっ。気にすんなって」
健は情けない顔をしたボクに対して微笑んだ。ここまで僕の付き合いをしてくれるのはこいつだけだ。
僕達は姉ちゃんの教室へ向かった。
扉を開けるのは、僕ではなく健。
「すみません。雪姫先輩見えますか?」
健は扉の近くにいた女子生徒に尋ねた。
「雪姫? もう帰ったよ?」
「「え?」」
僕と健は目を丸くした。
「暁くんって男子と一緒に」
暁? そういや姉ちゃんのクラスにヤンキーがいるって聞いたことがある。もちろん姉ちゃんから。
「そ、そうですか……ありがとうございます!」
健はお礼を言うと扉を閉めた。そして、学校を出た。
「良かったな。誰かと一緒で」
「ま、まぁね。ちょっと心配だけど。その人が」
「暁って人? なんでだ?」
「部活は何入ってるか知らないけど、姉ちゃんは陸上だから逃げ足速い。付き添ってる人が置いてけぼりにされないかってこと」
「あーね……」
警戒をしながら道を歩いていた。今のところただならぬ殺気は感じられない。家に帰るまで気は抜けない。
「殺人鬼はとてつもない殺気を発してる。油断してたら逃げ遅れる」
「あぁ。分かってるよ」
なんでこんなにも警戒しながら家に帰らなくちゃならないんだ……。せっかくめんどくさい学校から開放されたのに。いい加減心が疲れてきた。早く家に着きたいところだ。
「今のところ何もないな……」
健が辺りを見回しながら呟いた。
「…………」
僕は額に汗をかきながらも周りを警戒する。
すると__________。
「っ………!!」
来た。
殺気だ。
健も感じたのか後ろを振り向いている。
「な、なぁ……」
「うん……この殺気だ……」
僕達が後ろを見つめていると、電柱の後ろに黒い影があるのが分かった。
きっと殺人鬼だ。
「健! 走れ!!」
僕は咄嗟に叫ぶと同時に健と走り出した。
殺人鬼は僕達が走ったと同時に動き出した。また追いかけるつもりだ。
「あいつが殺人鬼!?」
「いいから走ることに集中!!」
僕達は懸命に走った。
待った。そんなに逃げてばかりじゃ、何も変わらない。奴に向き合ってやる……。
僕はおかしな方向に思考が回ってしまい、立ち止まった。健も僕が立ち止まるのを感じて立ち止まり、目を丸くして振り返った。
「おい! なんで立ち止まったんだ!」
「ごめん健。このまま逃げてばかりじゃ何も変わらない気がして」
「は!? 何言ってんだ早く逃げるぞ!!」
「健は隠れてて」
「おいやめろって! 馬鹿!!」
友人は殺人鬼を相手にしようとする
そうこうしているうちに、殺人鬼は立ち止まり、それからゆっくりと
友人は慌てて壁に隠れた。
「蓮……!」
視界の端っこで健が手招きするが、僕はそんなことは気にもとめなかった。
ゆっくりと近づいてくる殺人鬼は、立ち止まった僕に対して驚いている表情は見せず、ただただにやにやしている。
とりあえず、僕と姉ちゃんを追いかける理由を突き止めてやる。
僕は恐る恐る口を開け、それを実行した。
「ねぇ。なんで僕と姉ちゃんを追いかけるんだ?」
僕の問いに、殺人鬼は口を開いた。
「なんや逃げへんのかぁ。おもろないなぁ……」
「…………」
関西弁の殺人鬼だ。
「ただ追いかけとるだけやないっちゅうのはあんたも分かっとるはずやろぉ?」
「まぁ、ね……襲うんでしょ?」
「そうや」
「なんで?」
「あんたら姉弟の髪白いやろ? しかも純白や。そんなん赤く染めたくて仕方なくてな。なかなかええ作品になりそうや思て」
単純な理由に見えてかなり残酷な理由だった。恨みがあって襲ってきた訳ではなさそうだ。
「もう一人は追いかけても足が速くて追いつけへん。やから今日からあんたから狙うことにしたわ」
「じゃぁ、僕が殺られない限り、姉ちゃんは襲わないんだな……?」
「もちろんや」
これからも逃げ続けなければならないのか。
「うちは藤村絢芽。以後お見知り置きを。あんた、蓮っちゅうんやろ? まぁ今回は殺人鬼に向き合った勇気に免じて退いといたるわ。ほな」
殺人鬼、絢芽は身を翻しその場を去った。
殺されるのかと思ったけど、案外すんなり事が終わってしまった。
「なんなんだあいつ……」
ずっと隠れていた健が出てきた。
「分かんない。ただ、別に恨みがあった訳じゃなかったみたい」
「おい安心してる場合じゃないだろ……ほんとの理由聞いただろ? 理由残酷すぎだろ……」
健は青ざめている。
「どうやら北条姉弟を芸術作品にするらしい……」
「だから冷静すぎんだよもっと危機感持ってくれよ……」
「持ってるよ。一応」
「一応……」
「とりあえず今日は大丈夫そうだ。ありがとう健。もう自分の家に帰っていいよ」
「そ、そうかぁ……わかった。また追いかけられたら家まで走るか俺ん家に助けを求めて来いよ」
「いいのかよ……」
僕は健の発言につい吹き出してしまった。
「なんで笑うんだよ!」
「いや別に……」
「はぁ……じゃ、俺はこれで帰るからな」
「うん。じゃぁね」
僕は帰っていく健の背中を見送った。そして、健が見えなくなると、自分の家に向かった。
何事もなく、家に辿り着くことができた。
姉ちゃんは帰ってきているだろうか……。
「ただいまー」
「おかえりー!」
聞き慣れた明るい声が返ってきた。良かった。無事に帰ってこれたんだ。今ので一気に肩の荷がおりた。
姉ちゃんが走ってきた。
「大丈夫だった?」
「大丈夫だった。健と一緒に帰った。姉ちゃんはあいつに追われたりした?」
「いや、なんでか今回は追いかけられなかったし見かけなかったよ。せっかく暁くんに着いてきてもらったのになぁ」
姉ちゃんは申し訳なさそうな顔をした。
「僕は追いかけられた。でも追いかけてくる理由を聞いてみたら、白い髪を赤く染めたいかららしい」
僕は敢えて自分が殺されない限り姉ちゃんは狙われないことは言わなかった。
「何その残酷な理由!」
姉ちゃんは目を丸くした。まぁそうなるわな。
「なんでヤンキーと帰ったの?」
「え? 暁くんが声掛けてくれたから。ただ単に『一緒に帰らないか?』ってだけだったけど」
「殺人鬼のことは知らないんだな……」
「みたいだね。なんで蓮だけ狙ったんだろう……」
姉ちゃんは顎に手を当てて考え始めた。
「さぁ?」
その理由を知っている僕はもちろん知らないふり。
「きっと、見かける度に襲ってくるだろうねぇ……」
「な、なんでそんな事言うの!? やめてよ!」
姉ちゃんはかなり怯えている。
「大丈夫だよ。姉ちゃんは足が速いから追いつけないって」
僕は今までより緊張感が無くなって、謎の余裕ができている。それに対して姉ちゃんは……。
「それより蓮が心配なんだけど! え!? じゃぁあたしは大丈夫ってこと!? でもやだよ!? 蓮をほっとけないよ!」
恐怖で落ち着いが無い。
「大丈夫だって」
「大丈夫じゃない!!」
「うっ……」
「いい? これから一緒に帰るから」
「はあ!?」
まじか。
姉ちゃんの目が本気だ。部活にも熱心な姉ちゃんがそこまでするとは……。
「いやだから大丈夫だって……姉ちゃん部活やんなきゃだろ? また健と帰るから……」
僕はなんとか諦めてもらおうと頑張る。健には悪いけど、そのための犠牲になってもらうしかない……。
「健くんに悪いんじゃない?」
「でも自分から言ってきたんだ」
「へぇーそうなんだー」
信じてない様子。疑いの眼差しで僕を見てくる。
「とにかく、大丈夫だから! ほんとに!!」
「そぉ〜? 信じるよ?」
「信じてください」
僕は必死になった。
先に殺される予定の僕と一緒にいたらまとめて殺られてしまう。
「仕方ないなぁ〜。これだけは約束して? 絶対に無茶しないこと。近所の人に助けを求めるか警察に通報するかする事。あと連絡もちょうだい?」
「結構あるじゃん……」
「いい? 守ってね?」
「はいはい」
僕は適当に返事をした。多分守らない気がする。
会わなきゃいい。もし見かけたら隠れるか逃げればいい。
とりあえず今日は、知りたいことも知れたから安心はできないけど、落ち着いて過ごせる気がする……。気がするだけ……。
僕の街には妖怪が棲んでいる ナノサ @asaonan
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