第1話「僕の日常」

「蓮ー!起きろおおおおお!!」

朝から頭に響く声。それは僕の深い眠りをも妨げる悪魔の声。……まぁ姉ちゃんの声なんだけど。今日は学校。しかも月曜日という一番きつい日。ぬくぬくと暖かいお布団から出るのが勿体無くて、いつでも寝ていたい。休日なら姉ちゃんは昼までなら寝させてくれるけど、でも流石に学校の日は何がなんでも僕を起こす。よく通る姉ちゃんの声でも、寝起きがいいものではない。僕はね。流石に起きた方がいいか……。

「うるさいなぁ起きてるよ……」

僕はしぶしぶ起きることにした。うっすら目を開けると、窓に差し込んでくる太陽の光が顔に当たって眩しくてはっきり目を開けられない。

「起きてるって……半目じゃん」

「だって眩しいんだもん……」

僕は呆れた姉を前に、目を擦りながらしぶしぶ身体を起こした。

「ほら、さっさと顔洗って朝ご飯!」

姉ちゃんは僕の下半身にかけられている残りの布団を無理やり剥がした。めちゃくちゃ寒い。

僕は姉ちゃんに言われた通り、まず顔を洗った。

「冷たっ」

冷たい水が僕の顔を一気に冷やし、眠気を覚まさせた。どうやらボイラーを付けていないらしい。

台所へ行くと、姉ちゃんが朝ご飯を用意して先に食べていた。

「おはよ。目ぇ覚めた?」

「うん」

「まぁ流石に水道の冷たい水を顔に浴びれば目も覚めるでしょ」

「ボイラー付けてなかったのはそのためだったのか……」

「そうだよ」

悔しがる僕に対して、姉ちゃんはドヤ顔。「流石」って感じだ。

「頂きます」

僕は手を合わせて朝ご飯を食べ始めた。今日の朝ご飯は、目玉焼き、サラダ、スクランブルエッグというシンプルな組み合わせだった。

僕の両親は朝早くから家を出て遅くに家に帰ってくるから、朝ご飯や夕飯や弁当はいつも姉ちゃんが作ってくれている。僕は朝が弱いから昼と夜は手伝う。

朝ご飯を食べ終わると、僕と姉ちゃんは食器を片付け、歯磨き、準備をして家を出た。

鍵を掛けていないと思うだろうけど、実はスペアキーがある。スペアキーは基本的に姉ちゃんが持ってるけど、僕の帰りが姉ちゃんよりも早かったら、その鍵は僕の手に渡る。姉ちゃんは部活だらかね。因みに陸上部。僕は帰宅部だよ。

「準備できた?」

「できたよ」

「じゃ、行こっか」

「うん」

僕達は家を出て、学校に向かった。

僕達が通う学校は、大して有名でもない。ごく普通の高校だ。ただ、「組」がない程小さい。

「ねぇ、蓮は部活入らないの?」

「え」

唐突に嫌な事を聞かれて不意をつかれた。

「入んないよ」

僕は「当たり前だろ」と言わんばかりに応えた。

「なんで入らないの? せっかくホルン吹けるのに吹奏楽部ぐらい入ったらいいのに」

「別にホルン吹けるからと言って入らなきゃならないことはないだろ? ホルンはただの趣味。休み時間もほぼ一人でいる奴が入っても変わんないよ。それに、吹奏楽部は遅くまで練習してるんだ。姉ちゃんよりも遅く帰ったら手伝いが出来なくなるだろ……」

僕は咄嗟に口を塞いだ。

しまった。喋りすぎた。姉ちゃんにあまり知られたくない真実を……。

「…………」

ちらりと姉ちゃんの方を見ると、姉ちゃんは驚いたような様子で、表情が固まっている。そして、ようやく口を開いた。

「蓮……そこまで思ってくれてたの……? お姉ちゃんビックリなんだけど……」

「い、今のは聞かなかったことに……」

「そんなの無理だよぉ。しっかり聞いちゃったもん」

「うあぁぁ……」

恥ずかしすぎて死にたい。

「そんな恥ずかしがることないじゃん。嬉しかったよ。蓮が部活に入らない理由はよぉく分かった! 部活に入る入らないは自分自身が決めることだもんね!」

姉ちゃんは明るい笑顔で言った。

「……ありがとう……」

僕は少し小さめの声でお礼を言った。

話をしているうちに学校に着いた。そして、僕と姉ちゃんはそれぞれの教室へ別れた。

一年生は一階、二年生は二階、三年生は三階というふうに振り分けられている。組がないのにそんな振り分け方しなくてもいいと思っている。まぁそれの方がわかりやすいからいいけど。

僕は自分の教室の扉を開けた。挨拶もせずに自分の席に着くと……。

「よぉ、蓮。おはよ」

前の席から決まって挨拶がくる。挨拶した人物は、僕の前の席に座っている火野健ひのたけるだ。昔からの唯一のともだち。彼は軽音部所属でエレキギター担当だ。軽音部の発表には毎回聴きに行っている。健は常にマスクを付けているが、その理由が自分のコンプレックスにあるらしい。けど、よく喋るからマスクがずるずる落ちてきていてマスクの意味がない。

「おはよ」

僕は短めの挨拶を返した。

「相変わらず暗い奴だなぁ。もうちょっと気軽に行こうぜ」

「意味わかんねぇよ」

「ほんっとに、何年も友達やっててもお前の事がよく分かんねぇよ俺は」

「そうか?」

「昔から変わらない。まぁ変わったとしたら昔よりは、暗くなってるな」

「なんだそれ……ちょっと期待したのに」

「ないない」

はっきり言われた。

「ぶっちゃけ、お前は昔より酷くなってるぞ」

「そこはぶっちゃけないでほしかったな」

僕はむっとした。

「そんなこと言うなよ。自覚してないのか?」

「するわけないだろ」

「マジか。いいか? 今から、『自分は昔より暗くなってる』って自覚しろ。んで、それを修正できるようにしろ」

「なんか『原稿用紙を書き直せ』って言ってるみたいだな……」

僕は少し苛立った。

「まぁ簡単に言えば、もっと明るく接しろ」

「はいはい。できたらね」

これ以上うだうだ言われると面倒だから適当に返事をしておいた。健は僕に対しての説教が長くて、まるで母さんに説教されてる感覚になる。こいつの性格の中に、オカン要素が混ざっている。

「まったく、お前はほんとに適当だなぁ」

健は呆れた顔で言った。



キーンコーンカーンコーン。

キーンコーンカーンコーン。



いつの間にかチャイムが鳴っていた。朝の読書の時間だ。僕はいつも本を読むふりをして居眠りをしている。窓側の一番後ろだからあまり気づかれることは無い。たまに健が起こすこともあるけど、僕はなかなか起きないよ。気になる本があれば、それは真剣に読むけど……。これがなかなか無い。



キーンコーンカーンコーン。

キーンコーンカーンコーン。



再びチャイムが鳴った。今度は一番嫌な授業の時間だ……。

一限目なんだっけ……。

「なぁ健ぅ、今から何?」

僕はだらけながら健の制服を引っ張る。

「はぁ? 嘘だろ……? ……国語」

振り向いた健の顔はげんなりしていた。けど、教えてくれた。健はそういう奴だ。

「ども……」

僕はのそのそと国語の教科書とノートを引き出しから取り出すと、机に突っ伏しようとした。

「おい。聞くだけ聞いといて寝るわけじゃねぇだろうな……?」

健の低い声が僕の身体を重くした。

ぎくっ……。

図星で一瞬体が震えた。

「そ、そんなことないよ……」

「嘘つけ。その体勢だと説得力皆無なんだけど」

「ちぇ、バレたか……」

僕はしぶしぶ身体を起こした。

「バカタレ……」

「いて……」

健に頭を軽く叩かれた。そして、健は身体を前に戻し、授業モードに入った。

早く授業終わんねぇかなぁ……。



唐突に始まるある景色。時間は夕方。僕は姉ちゃんと道を歩いていた。しかも、その時の姉ちゃんは、小さい頃の姉ちゃんだった。僕はそんな姉ちゃんよりも背が低い。ということは、僕も、小さい頃の僕なんだろう。その光景がとても懐かしく思える。

二人で歩いていると、一匹の白い猫が目の前に現れた。しかもただの猫じゃない。酷く汚れていて、やせ細って弱っていた。今にも倒れそうな状態だ。

僕と姉ちゃんはその猫を、近くのゴミ捨て場にあるダンボール箱に入れて、家に帰った。

家に帰ったら、まず猫を綺麗に洗ってあげた。汚れも綺麗に落としていった。洗い終わったら、タオルで拭いて、ドライヤーで乾かしてあげた。そのあとは、猫が食べられそうな物を冷蔵庫から出して、それらを細かくして猫に食べさせてやった。親が帰ってくるまで一緒にいてやった。飼ってやりたかったけど、親がどうしても嫌がる。こんな弱った猫を野放しにするなんて可哀想だった。

親が帰ってくる数十分前。僕と姉ちゃんは、猫を外へ逃がしてやることにした。猫は僕達の方をじっと見つめていたが、そのうち、背を向けてどこかへ走り去って行った。



「……い。おい! 起きろ!」

暗闇の奥から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「蓮!!」

「……っ!!」

僕はばっと顔を上げた。

「やっと起きたか……」

目を開けると、健が僕の前に立っていた。

「なんで四時間ぶっ通しで居眠りしていられるかねぇ……。俺が毎時間先生に起こすのを頼まれ、何度起こそうとしたことか……」

「え、僕そんな寝てた…?」

「あぁ。いくら蓮でもここまで寝るなんて初めてじゃないか?」

確かに。ここまで寝るなんて今までで初めてだ。長くて一時間。いつもなら休み時間よチャイムが鳴れば健の起こす声で目が覚める。

「具合でも悪かったのか?」

健が心配そうに僕の顔を覗き込む。

「いや、大丈夫だよ」

ほんとに何ともない。ただ長くて、どこか見覚えのある光景の夢を見ていただけだ。

「ならいいんだけど。ほら、お昼だし弁当食べようぜ」

そう言いながら、健は鞄から弁当箱を取り出し、僕の机の上に置いた。

「そうだね」

僕も鞄から弁当箱を取り出した。そして、僕達は弁当を食べ始めた。

「なんだよ蓮。昨夜そんなに遅くまで起きてたのか? いや、蓮に限ってそれはないか……」

「おい。なんか失礼だぞ」

「あ、悪い悪い」

健は謝るも笑っていた。

「……夢を見てた」

「夢?」

僕の言葉を聞いて、健は卵焼き挟んだ箸を口の手前で止めたままきょとんとした。

「昔の光景が広がってた。その時助けた猫も出てきた」

そう言えば本当に昔助けた猫がいた。今はどうしてるんだろう。結構大人な感じがしたから、今はもう……。

「なんか奇妙だなぁ」

「うん」

その時。箸を持つ健の手が緩んだ。

「あ」

ある瞬間を捉え、僕は声を漏らしして下を見る。

「あ?」

僕の反応を見て、健は同じように下を見た。

「っ! あああああああああ!!」

ある悲劇を目撃できたのか、悲鳴をあげた。それは。

「俺の卵焼きがああああああ!!」

そう、口の手前で止めてしまった卵焼きを挟んだ箸に込められていた力が緩んでしまい、床に落としてしまったのだ。勿体ない。

僕はいそいそとご飯を平らげ、荷物を持って席を立った。

「ん? おい蓮どこ行くんだ!?」

健の声にも振り向かず、僕は学校の中庭まで出ていった。

中庭は滅多に生徒は来ない。だから僕は一人でホルンを演奏してる。それが僕の日課。ホルン吹いていると、一番落ち着くんだ。最初は吹くのを躊躇っていたけど、音楽室でピアノを弾いている人がいるくらいならなんてことないだろうと思えてきて、今はそんなの気にしない。以前、吹奏楽部の顧問が、中庭で一人ホルンを吹いている僕に「吹奏楽部に入らないか?」と聞かれた事があったけど、もちろん断った。

「蓮」

後ろから声がした。

健だ。

「どうしたんだよ急に教室飛び出して行っちまうなんて……」

「いや、あの空気が耐えられなかっただけ」

「なんで? 普通だと楽しい方だろ」

「慣れてないんだよ。ああいうの」

「なんで慣れないんだよ。友達も少ないし。お前は何がしたいんだよ」

「別に何かがしたいというわけじゃないよ。友達は作ってないだけ。少ない方が楽でいいだろ?」

「お前……」

「僕は気にしないで、戻ったら?」

「いや」

健は唐突に僕の腕を掴んだ。

「え?」

「お前も来るんだよ」

そう言って、健はそのまま僕の腕を引っ張って行った。

「ちょっ、楽器片付けてないんだけど!?」

「それでいいんだよ!」

「言い訳あるか! ケースも中庭に置きっぱなしだよ!」

「後で取りに行けばいいだろ!」

「はあ!?」

健は僕を引っ張って教室の方へ走り続ける。そして、教室の扉の前で立ち止まり、思い切って扉を開けた。扉が開かれた音で、生徒達が一斉にこちらに振り向いた。

またこのパターン。

「おいみんな! 蓮がホルンを演奏してくれるとよ!」

息を切らしながら、健はとんでもないことを宣言した。

「は……?」

僕も息を切らしながら、一瞬健の台詞が理解できないままでいた。

「マジ?」

「え、聴きたーい!」

生徒達が期待に胸をふくらませ始めた。

……嘘だろ……。

「ほら、吹いてやれよ」

「お前っ…!」

「いいじゃねぇか。あんな一人でプープープープー吹いててもつまんないだろ?」

「え、別にそんなことないけど……」

「さ、吹いてやれ」

「聞けよ」

なんとかして諦めてもらおうとしても、健は折れなかった。

「…………」

僕はしぶしぶマウスピースを口に当てた。

折れたのは僕の方だった。

僕は覚えている曲を吹き始めた。曲は「木星」のメロディの部分。皆がよく知っている部分だ。

生徒達は真剣に聴いている。人前で吹くのは初めてだ。まるで、ソロコンサートに立っているようだった。僕はなるべくみんなの方を見ないように目を瞑りながら吹いた。

──曲が終わった。

恐る恐る目を開けてみる。

生徒達が目を大きくして、口を開けていた。



パチパチパチパチパチパチ!



手を叩く音が大きく聞こえてきた。拍手だ。

「すげぇよ蓮!」

「かっこいいー!」

「なんだよもっと早く聴かせてくれよぉ」

「また聴かせてよ!」

生徒達が一斉に歓声をあげた。

これは、喜んでいるのだろうか……。

「な? たまにはみんなにお前のホルンの音を聴かせてやってくれよ。みんなこんなに喜んでる」

健が驚愕している僕の肩を置いて言った。

「これで良かったのか……?」

「何言ってんだ、いいに決まってるだろ!」

健は僕の背中を叩いた。

「ふっ……なんか今までに無い気分だよ」

「そうか! なら良かった! な? たまにはこうしてみんなの前で吹いてみるのもいいだろ?」

健は満面な笑顔を見せた。

今までにこんな清々しいことはなかった。これも、健のおかげか。健にしてやられたよ……。

「お? 表情が今までよりも柔らかくなったな!」

「え……?」

表情ってそんなに分かりやすいものなの……?

「ははは! これでちょっとはクラスメイトのみんなと距離は近づけたんじゃないか?」

「そうかも……」

「よし、じゃぁもうすぐお昼休み終わるからそろそろ次の授業の準備するか!」

「そうだね」

僕は楽器を片付けようとした。

「あ」

あることに気づいた。

「ん? どうした?」

健が振り向く。

「楽器ケース!!」

「ああ!」

健に連れられてから、楽器ケースはまだ中庭に置きっぱなしだ。

僕は全速力で中庭へ向かった。忘れ物として生徒指導室に届けられてなければいいけど……。

中庭へ着いた。楽器ケースは……。

「……あった……」

僕は酷く息を切らしていた。また教室まで走らなければならない。しかも今度は楽器ケースという荷物を持ちながら。

「きっつ……」

仕方なく走って戻った。

「おかえり。ぎりぎりだったな」

「お、おう……」

「あーあ、こんなに息切らして。そこまで本気で走ったの久しぶりじゃないか?」

「そうだっけ……?」

「あぁ。だって体力テストとかマラソンとかただダラダラ走ってるだけだろ」

「そうだっけ……?」

「なかなかお前が本気出してるとこ見たことないぞ」

「別に本気出したからって変わらないでしょ」

「相変わらずだなぁお前は」

健は呆れた顔をした。

掃除を済ませて、次の授業の準備をする。次の授業は、二限続けて家庭だ。今は裁縫をしてるから寝ることができない。自分が作りたいものを決めて、作り方を調べて作っていく。因みに僕はブックカバー。簡単だから。

「なぁ。健は何作ってるんだっけ?」

僕は裁縫に集中している健に声をかけた。

「ん? 俺は巾着袋作ってるよ」

「何に使うの?」

「何って……。小物を入れるとか?」

「小物?」

「うーん……例えばヘアピンとかティッシュとかマスクの予備とか?」

「女子か」

「仕方ないだろ。俺には必要なんだから」

健は少し赤い顔でむっとした。

「いてっ……」

僕は針を指に刺してしまった。指先からぷっくりと血が膨らんで出てきた。僕は血が出た指を舐めた。痛てぇ……。

「おいどうした?」

「健、ティッシュ頂戴……」

「何やってんだよ」

「ごめん」

「ほい」

健はポケットティッシュを渡してくれた。

「ありがとう」

「あと……」

「ん?」

ポケットティッシュだけを取り出したかと思いきやまた鞄の中を漁り出した。取り出したのは絆創膏だった。紙を剥がし、僕の指に貼ってくれた。

「これでマシになったろ」

「流石っすね、女子力高い」

「うっせ。女子力関係ねぇだろ」

「いやいや……ありがとうございやす」

僕は神様を拝むように手を合わせた。

「手を合わせるなっ」

「いてぇ……!」

健にデコピンされた。健のデコピンはめちゃくちゃ痛い。

「おっと、強すぎたか?」

「いつも強いよ。あと反省してないだろ……」

「してない」

即答だった。ひどくね?

こんな調子で、裁縫を二時間やり、学校が終わった。やっと帰れる。

僕は帰る準備をする。

「健、今日も部活?」

「当たり前だろ。休みはあんまないんだ」

「そっか」

「なんかあった?」

「別に?」

「そうか、じゃ、また明日な」

「おう、部活頑張れよ」

別れを告げると、健は鞄を背負い、教室を出ていった。僕も帰るか。そういや姉ちゃん今日部活だよね。鍵借りてかないと。

僕は二年生の教室へ向かった。

扉を開けるのを少し躊躇い、思い切って扉を開けた。

「姉ちゃん?」

少し小さな声で姉ちゃんを呼んだ。

「あ! 蓮!」

僕の小さな声でも気づいてこちらへ走ってきてくれた。

「ごめん! 鍵渡し忘れてたね! はいこれ! 帰ったら洗濯物入れてくれる?」

「分かった」

「ありがとう! なるべく早く帰るから!」

「無理しなくていいよ」

「そっか、蓮はやる時はやるもんね! んじゃ、よろしくね!」

「うん」

姉ちゃんは僕の頭をくしゃくしゃに撫でると、再び教室へ戻っていった。

姉ちゃんが部活で頑張ってる分、僕も家事手伝い頑張らなきゃ。

僕は急いで家に帰ることにした。

──道を歩いていると、突然謎の嫌な殺気を感じた。

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