プロット:病院抜け出した涙

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第1話 病院抜け出した涙


 世の中には、どう考えても、どうあぐねても、どうしょうもない事がある。


それでも、


何年前だろう、 自分が、交通事故で、入院した病床は、なぜか、空きのベットのある内科病床であった。

そこで、隣の鈴木さんと出会った。

自分より、ひと回り以上、年上の鈴木さんは、脳梗塞で、長期に入院されていた。

鈴木さんは、以前は自動車修理工場を経営していた。

自動車修理の長年の技術を持つ、鈴木さんと、 ある日、病院を抜け出した。


私(A)は、自宅から、今、気に入っているオープンカーを持ち出して、 閉鎖的な病棟へ戻り、そして、抜け出した。

首都高をかっとんで、走行した。

助手席の鈴木さんは、言った。

鈴木(S)「もらしたこと、、、ありますか?」

私(A)「えっ・・・・」

鈴木(S)「ねぇ、ありますか。」

私(A)「ヤバいですよ、スピンしちゃいますよぉ~~」

・・・・・・

無言でいると、鈴木さんの目から大粒の涙が、、

私(A)「あっ、どこか、コンビニでトイレ借りましょうか?」

鈴木(S)「そんな話じゃないんですよ、 どうあぐねても、どうしょうもない。 辛い・・・。 車検場に、車持ち込む、こともできない修理屋なんて。」

ここは、思いっきり、走るより、他ない

・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・

私(A)「早く、仕事出来るようになるといいですね。」

鈴木(S)「仕事は、とても、とても・・・・シベリアンハスキー犬を 連れて散歩が、リハビリで、今一番の幸せなんすよぉ」

それから、また、大粒の涙が、、

鈴木(S)「そのね、シベリアンハスキーがね、死んじまったんですよ。」

その後、鈴木さんは、

鈴木(S)「マセラッティの不思議はね・・・」と、語ってくれた。

ミモザは咲いていたが、 今は、まだ、寒中・・・

鈴木(S)「正月は、冥途の旅の、一里塚って、言いますね。」

私(A)「ええ。でもねぇ・・今ねえ、コーナー攻めてんのに、

 今、それ、言わなくてもいいじゃないのぉ~、もう、、」

鈴木(S)「浅田さんは、まだ、若いから、そう考えた事、無いだけしょう~。」



それから、しばらく経って、 サクラの頃、 鈴木さんの修理工場に行ってみたら、 その屋上のプレハブの中で、パジャマ姿で寝ていた。

鈴木(S)「浅田さん、ほんとに、来てくれたんだねぇ」

私(A)「また、会えて良かったですよ。サクラ咲くしね。」

鈴木(S)「この時期、明るいねえ」

私(A)「ええ、そうですね」


そして、鈴木さんの好きな小林旭さんの「自動車唱歌(ショー歌)」を 熱唱したのは、もう、何年前だろう。

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