終結
すべて終わった。争いはこちら側の勝ちらしい。歓喜の声が聞こえ、どこからともなく祖国の歌が聞こえる。2人の戦いは、やはりどちらが死ぬわけでもなく終わりを告げた。アズワルドは倒れこみ、いつものように笑う。昨日見せた力なさげな笑みではなく、最初に見せた純粋な笑みだ。
「殺してよ」
彼の、心からの願いなのだろう。俺は、きっとこうなるだろうと思っていた。だからこそ、考えていた答えを返す。
「俺は、お前を殺さない」
その瞬間、彼の顔には絶望が浮かんだ。当たり前だろう。外へ出ることを、文字通り死ぬほど望んでいた男だ。それがどうした。
「お前だけを、この国から出させるわけにはいかない。俺だって出たいのに、お前だけ出るなんて理不尽だろう?」
彼の目が惚けるように溶けた。そうかと、ため息と一緒に笑みを浮かべる。
「君と一緒なら、待ち続けるよ」
そうか、それなら良かった。俺は言葉に出来ず、奴の瞳にはじめて笑みを映して見せた。
終焉 城崎 @kaito8
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