拒否
しばらくして、表情をなくしていた奴の口が動く。
「一緒に、全てを放棄して、外の世界に出てみない」
その問いに、疑問符はなかった。俺への言葉ではなく、ただの独り言として呟いたのだろう。目の前で、あからさまに。奴もやはり、敵ではなく同士として出会えた可能性を考えたことがあったのだろう。
「やだ」
反応があるとは思わなかったのだろう。もしかしたら、言葉になっているとも思っていなかったのかもしれない。奴は、珍しく力なさげに笑った。
「なんでよ」
「俺は、優しい人間じゃない」
「ああ、知ってるよ。それでいいんだ」
奴は、毅然と立ち上がる。
「帰るのか?」
「うん。早く寝ないと。君に負けたくないから」
「そうか」
「じゃあ、また明日」
綺麗に頭を下げたアズワルドを見て、初めて彼が貴族であったことを思い出した。綺麗な男だ。
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