他人事のような雰囲気の中で、読者に様々な感情を引き起こさせてくれる。

 私はカクヨム運営の公式レビューをきっかけに今作に興味を持ったのですが、実際に読んでみるまでは、コミカル一辺倒な作品だと思っていました。もちろん、「地球人はたかが数千ケルビン変わっただけで死んでしまう」「『マニュラピーダ』という生物は地球人と共生可能」等といったどことなく笑える表現も多いのですが、その一方で、「野生の地球人を捕獲する」「人工妊娠ユニットを使えば、遺伝子を選んで好きな外見の幼体を産ませることができる」等といった不穏な表現も目立ちます。

 何度か差し挟まれる地球人視点のエピソードについては、「ペットにされる立場」としての「残酷さ」を際立たせたものがメインといった印象。ところが、最後の『とある女子高生の回想』においては、地球人にとってある種の「救い」のように書かれており、それによって、物語としての「深み」が引き立てられているように感じられました。

 総じて言うと、ユーモアとシリアスな面が絶妙なバランスで交じり合った作品になっているのではないでしょうか。軽い読み口で「他人事」のような雰囲気が漂っていますが、そんな中で読者に様々な感情を引き起こさせてくれる作品に仕上がっていると思います。

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