魔女青春譚
奴羅李 くらり
第1話 魔女、転生者なり。
「勇者!今日こそ私の秘密を暴こう!」
「んな!急に何を言い出すかと思えば、またそれか!いい加減にしろ!」
私、黒荊
だが、しかし、彼はこれに付き合ってくれない。
勇志は、私が勝手に勇者と呼んでいるだけだ。
現に、私は前世で勇者を見たことはないし、そんな境遇でもなかった。
でも、彼が勇者なのでは、と期待を向けているのである。
なんたって、名前が勇者に近いからね。
「あのな、俺は勇志で、勇者じゃないからな?今度、そんな事言ったら、ぶっ飛ばす」
私に指を突き付け、大声で言う姿は迫力がある。
ツーブロの髪が窓から吹き付ける風で揺れた。
「もー。つれないの。そんなんじゃ、モテないよー」
私は自分の机の上に座り、足をぶらぶらと揺らした。
「いや、お前に言われたくないからな?」
「くっそぉー!馬鹿勇者!」
「だから、俺は勇者じゃなくて、勇志!もう帰るぞ」
勇志は私の分のカバンまでその手に持ち、教室のドアへと歩き出した。
「はーい」
(何だかんだそういうところが優しいのよね)
魔女青春譚 奴羅李 くらり @tibaichigo
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