あのね、これから

新吉

第1話

男の人がドアを叩いている

必死に叩いている



うるさいなあ

そう思ったけれど私は無視した


だけどもその音は鳴り止まなくて


郵便受けがカタカタいってる


私は見上げてのぞいてみた

でもうまく見えなくて


というか体も上手く動かない

目も上手く見えない気がする

どこか臭い気もするけど

どこか熱い気もするけど


とにかく私は眠いんだから

ほおっておいてほしい




私が眠りにつこうとしていると


「あと30分しかありません!!」


そう大きな声が聞こえた

誰の声だろう



「〇〇〇〇!!」



彼が私の名前を呼ぶ声がした

私のことを呼んでくれる彼を思い出した


何度も何度も呼ばれながら

私はなんだか安心しながら

さっきみたいにイライラしないで

眠りについた



次に目覚めたら

なんだか嫌な臭いのする白いところで

彼はすごく泣いて私を見て笑った


家の帰り道

彼の腕の中

拾われたことを思い出す

あったかい家を思い出す


彼は私の名前を呼ぶ



「たま、あのねこれから」


「たま、住むとこなくなったよ」


「たま、お金もなくなっちゃった」


「たま、これからどうしようか?」


「たま?ねえ聞こえてる?」


「たま、」


「たま!僕には君しかいないんだ」



ちりりん


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あのね、これから 新吉 @bottiti

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