夏から初秋へ

「キャプテン、遠田

副キャプテン、井塚」


今日は、ミーティングがあるから、多目的教室に集合、と顧問から聞いていた。


顧問から、キャプテンに美橙が指名された時、副キャプテンが実沙だとわかった時。他の部員から、何となくだが、やっぱり、という雰囲気を感じた。


だが美橙は、そうは思わなかった。


正直、美橙か実沙のどちらががキャプテンだろうと思っていたし、それをどことなく匂わせていた。

しかし、美橙の中での最終結論は、美沙がキャプテンになっていた。

それは、美沙も同じであろう。


ミーティング時、隣同士に座っていた美橙と実沙の間になんとなく、不穏な空気が流れた。

それを、感じた。お互いに。

美橙は、これからの実沙への態度と、実沙の態度。

実沙は、逆で、美橙への態度と、美橙の態度。


ミーティング後の練習は、お互いにどう接したら良いのか。


「これ、しようと思うんやけど、どう思う?」


実沙にこれまで通り、日替りキャプテンの時と同じように、提案してみた。

いつもの事だった。

実沙は、ああうん、と曖昧な答えを残し、シュートを打ちに行った。


この程度の反応は想定内だった。が、予想はしても実際には、かなりきつい。

ダメージ。


一緒にいた真綾は、なんと思っているのか。

「美橙がキャプテンやねんから、美橙が決めていいよ」


実沙の態度にひねくれた美橙にとってのその言葉は、配慮としてではなく、嫌味、押し付けと受け取り、疎外されてるような気にさえなった。


実沙はまだしも、真綾は想定外で、かなりのショックだった。

一日目にして自分のメンタルと、この先やって行けるのかと、不安になった。

目の前は闇だ。進んでも進んでも明かりは見えない闇のようだ。


子供の自分には荷が大きすぎる。頭が破裂しそうだ。そして。


わかっていた。


まわりの態度、そんなことを気にしてしまう、自分の弱さに。部活以外の事にいっぱいいっぱいになってしまい、冷静さのなくなった自分の情けなさに。


しかし、認めたくはなく、思考回路を閉ざした。


現実逃避。

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幼さ故に @Hibino-spring

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