幼さ故に

@Hibino-spring

ピー!!

白熱したコートに鳴り響く。


中体連 予選リーグ 第4クオーター 残り3分22秒

鶴川東 46 - 浜滝 48


今のホイッスルは鶴川東のファウル。

審判のジャッジは、5番。


オフィシャルチームが審判に何かを伝えている。


そして。


ピー!!


2度目のホイッスル。

ファイブファウル、退場。


泣きながらベンチに帰ってきた、副キャプテン。

「美橙、行け。」

コーチに言われ、美橙は、副キャプテンの交代として、コートに立った。


鶴川東の女バスの3年生は、2人しかいなかった。だから、2年生の中の何人かは、常に試合に出ていた。それが、実沙だった。


13番をつけた美橙は、人より小さい体で、精一杯プレイした。

美橙は、初心者で中学生からバスケを始めたが、先輩からは、成長が早いとよく褒められ、実沙の次に試合経験が多かった。

実沙以外、2年生には経験者はいなかった。


先程のファウルで、チームファウルもたまり、フリースローだった。

浜滝は、それを2本、しっかり決めた。

点差は4点。シュート2本分。


残り50秒になった時だった。

美橙が最後にタイマーを見た時である。

得点は、

鶴川東 52 - 浜滝 54

また、2点差に戻った。


しかし、両チームのシュートは入らず、そのまま試合は終わった。


諦めてはいけないと思っていた、しかし、涙でグチャグチャだった。キャプテンも美沙もベンチも。


ただ1人。怒りを押し殺したような顔で立ち尽くすコーチがいた。


浜滝は、いつからかライバル校となっていた。


秋の新人戦では、なんなく勝利した浜滝相手に、中体連前最後の公式戦で敗れた。


リーグが決まって、浜滝に勝たなければ、県大会の道は難しかった。

まずは浜滝に勝つために、と。これまでキツイ練習も、コーチに怒鳴られながら頑張った。

悔しかった。


今日、この試合で浜滝に負けたから、明日当たるのは、地区中体連優勝常連校。

ミニバスで培ったそれぞれポジションの星が集った、いわゆるオールスター的なチームであった。


翌日、コーチは来なかった。

最後の試合、オールスター校との試合は、32点差で敗れた。

しかし、32点差で抑えれたことは、大きな進歩だった。



『最後は笑おう』


キャプテンが散々言っていた言葉だった。


負けたけど、コーチは来なかったけど、笑うことができた。

満足ではない。しかし、無理に笑ってるわけでもない。


最後に、良い試合ができた。心からそう思った。

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