第4話 俺の名は
小母さんも小娘も、そして俺も黙々と食事を続けていた。
「中東、シリア問題に関して、ロシアのプーチン大統領は
「はぁーっ! ロシア? 何でロシア何だ? ソ連の間違いだろ。それに大統領だあ? スターリンだろ、書記長は。馬鹿が」
「お母さん、それんってなあに?」
「ええっと、ロシアの古い、以前の国名よ」
「ふーん」
と、親子して頓珍漢な会話をしている。
俺は唖然とした。時代が未来に飛んでいるかのような設定だ。浦島太郎か、俺は?
「では、次のニュースです。昨日、天皇陛下が水稲お手まきを行われました。皇居内生物学研究所で……」
「おいおいおい。陛下がこんな御老人な訳ないだろう?
「お願いだから、座って。ご飯を食べて」
と、背後に居た小母さんは今にも泣き出さんばかりの表情で、懇願する。
俺はテレビの両脇から手を離すと、席に戻って、大人しく
まぁ、良い。夢だからな。もう何もかもグチャグチャだ。その内、
俺は小母さんを
は
小娘の方は一早く食べ終わると、食器を片付けて部屋を出て行く。
「七海、体操服忘れないでね」
「はーい」
と、娘は何ともだらしない返事をした。
そうか。ななみというのか。しかし、少しあれな名前だな。谷崎潤一郎の小説に出て来る痴女みたいな名だ。だから、あんな口の訊き方をするのか?
「大樹も学校遅れるわよ」
たいき? 俺の事か? 学校? 学校に行くのか? なら、早く食べないと。
俺は一気に平らげた。
「御馳走様でした。美味しかったです」
「あら、有難う」
と、小母さんにやっと明るい表情が出た。
部屋に戻ってみると、大きめのバックに教科書やらノートが詰めて置いてあったので。今日は木曜日。壁にピンで留めてある時間割とも一致する。
服は……ハンガーで掛けてあるのを着ていけばいいのか?
学生服の左胸の名札には、多摩南中学校、二年二組、出水大樹とある。
多摩?
窓から外を見たが、町並みはどう見ても町、あるいは市の規模だ。
ん? 学校の場所は?
向かいの部屋の戸の開け閉めの音がした。続いて、小刻みに軽く階段を駆け降りる。
俺は急いで、戸を開けた。
「ななみ、待て! 一緒に行こう」
「良いけど。じゃあ、早く着替えてよ」
と、ななみは少し御機嫌斜め気味に答えた。
中学校も小学校と同じ方向のようだ。良し良しと
学生服に袖を通す。もう着る事はないと思っていた。何とも言えない喜びを感じた。
君は青い空を見たことがあるか? 訳/HUECO @Hueco_k
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。君は青い空を見たことがあるか?の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます