花束を抱える姿は、赤子を抱く姿に似て。

 短編ですらっと読めてしまいますが、その読後感が素晴らしい作品。
 描かれているのは何気ない日常。派手な事件も起きなければ、何か特別なことも起こらない。それでも人の営みの中に、日常の中に、素敵な物語は潜んでいることを、この作品は教えてくれる。
 病院に入院している人のために花束を買う男。
 その花束が最後にどこに落ち着くのか。そしてその花束が男にもたらしたものを感じていただきたい。
 文章に制限がありながら、この雰囲気を持った作品を書ける作者様には敬意を表したい。本当に秀逸だ。読みやすく、過剰な表現は無く、最後はすとんと腑に落ちる。
 日常に疲れ気味の方に是非読んでほしい一作。
 是非、ご一読ください。

その他のおすすめレビュー

夷也荊さんの他のおすすめレビュー1,168