花束

作者 笠井ヨキ

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★★★ Excellent!!!

 短編ですらっと読めてしまいますが、その読後感が素晴らしい作品。
 描かれているのは何気ない日常。派手な事件も起きなければ、何か特別なことも起こらない。それでも人の営みの中に、日常の中に、素敵な物語は潜んでいることを、この作品は教えてくれる。
 病院に入院している人のために花束を買う男。
 その花束が最後にどこに落ち着くのか。そしてその花束が男にもたらしたものを感じていただきたい。
 文章に制限がありながら、この雰囲気を持った作品を書ける作者様には敬意を表したい。本当に秀逸だ。読みやすく、過剰な表現は無く、最後はすとんと腑に落ちる。
 日常に疲れ気味の方に是非読んでほしい一作。
 是非、ご一読ください。

★★★ Excellent!!!

花を買うなんて慣れないことをして、やっぱりちょっと上手くいかなくて、
それで家に帰れば、その『慣れないこと』の居場所もなくて。

慣れないことをするもんじゃねぇな、なんてちょっと笑って日常に戻ろうとした時に、その香りは強くなる。

もしかして、捨てちゃうんじゃないのか、なんてちょっとハラハラしながら読んでいましたが、安心しました。きっと彼はその花が枯れるまで何だかんだと愛でちゃったりするんだろうな。そんなことまで考えてしまいました。

面白かったです。

★★★ Excellent!!!

構成力と語り口が素晴らしい…好きです。

日常の、切り取った一コマ。本当のちょっとした日常で、けれど主人公には少し違った日常で、だから花を買ってみて、でも花は見てもらえないしカミさんも普段通り。本当に日常。けれど最後にぶわりと色濃く漂ってくる花の匂いも、主人公がその花を花としてちゃんと認識したことも、確かにその日常に愛は溢れているんだということを私達に教えてくれた気がしました。赤ちゃん抱けるといいね。

★★ Very Good!!

言ってみれば「とりとめのない話」なんですが、それがまた日常の延長線上にある非日常な1日の中の更にワンシーンを切り取ったみたいで

短編小説の冒頭やオチを削り落として更に核になる部分だけ切り取って抜き出したような、変な喩えだけれど現代文のテスト問題用に切り抜かれたような

でも、これだけでちゃんと伝わってる気がするんですよね、そんな作品

★★★ Excellent!!!

 入院した奥さんのために花束を買った男性。花屋での落ち着かない愚痴に耳を貸しながら購入した花は、あっさり病院側に持ち込みを却下されるのだが――

 鍋に活けられた花があって、孤独で押しつぶされそうだった男性がそんな花を見て微笑んでいる。
 本作を読み終わってそんなイメージが鮮やかに浮かんできました。
 花を見ていると心が和む。
 そんな気持ちを思い起こさせてくれる作品です。