エピローグ

###エピローグ



 7月1日、アカシックワールドのサービスが終了した。サービスと言うよりはβテストのままで運営していたと言うべきなのか――。

なお、この件に関しては最初から決まっていた事と公式ホームページでは言及されているが――全貌は明らかになっていない。

 一連のジャンヌ・ダルクが起こした一件に関しては『サプライズイベント』と言う形で報告をしている。

その一方で、パワードフォースとの関連性も『公式から認められたコラボ』と発表された。コラボに関してはロケテ前からも言われているので、今更という気配はあったのだが。

それ以外では――ジャンヌ・ダルクの一件が決着して以降も、変わった光景が見られない。

結局、炎上マーケティングを止める事は誰にも出来ないのか? 様々な問題点を浮き彫りにして問題提起をしたという個所では――前進したと言うべきかもしれない。



 7月2日、エイプリルフールには早いだろうと思われる告知がアカシックワールドの公式ホームページで発表された。

それは『一時的なサービス延長』だったのである。おそらくは新作の方が調整中という説も大きいが、ARゲームの新作は競合他社からもリリースされており、それはないだろう。

しかし、このニュースはアカシックワールドが気になっていたプレイヤーにとっては朗報とも言えるだろうか。その一方で、新規プレイヤーの募集は行われない。

あくまでも――βテストまでにアカウントを持っていたプレイヤー向けの話である。

「この復活は、どういう風に受け取ればいいのか」

「サービス終了が7月なのは決まっていたのだろう。しかし、1日とは唐突過ぎた――のでは?」

「それだけではないだろう。色々な事情で再開せざるを得なかったとか?」

「ファンの要望をあっさりと反映するようなARゲームとも思えない。それに――」

「どちらにしても、まだバトルが見られるのは大きいだろうな」

 アンテナショップ内のセンターモニターで、それぞれのギャラリーが話をしている。続行に関しては歓迎している人物ばかりではないと言う事なのだろう。

それに――炎上マーケティングに関する部分も解決したとは言い難い。様々な部分で、黒歴史になりそうな要素は――。

「結局、こういう末路になるのは目に見えていたと言うべきなのか――」

 センターモニターのギャラリーを遠くから見ていたのは、レーヴァテインである。

俳優活動の再開は未定だが、新たなバイトとしてARゲームのテストプレイヤーを始めていた。

一連のレーヴァテインとしてのプレイがゲームメーカーに認められ、今回の話となったが――彼としてはまだ不安が残る箇所もある。

「炎上させようと考える勢力、それ以外にも――あるかもしれないな」

 チートプレイヤー狩りをしている時、レーヴァテインはある人物の存在が全ての原因なのではないか――という趣旨の証言を得ていた。

まとめサイトの管理人の一人が、今回の事件を大きくした犯人と噂されていたのである。しかし、既にまとめサイトの管理人はヴェールヌイが捕まえていたはずだ。

それでも――他の大手炎上系まとめサイトは、いまだに健在だ。ARゲームに関与しなかった分だけ延命したサイトだってあるだろう。

「新しいARゲームがリリースされても、同じ道をたどるのか――」

 その後、レーヴァテインは指定された場所へと向かう事にする。そこがロケテスト実施エリアであり、依頼のあった場所だからだ。

レーヴァテインがアンテナショップを出るのと同時に、店内に入ったのは斑鳩(いかるが)である。

彼女はプロゲーマーへの道は通らないが、それでもARゲームは続けるようだ。仮にネット炎上しようとも、それは炎上させた人間が責任を持つべきだろう――と。



 午後1時、アークロイヤルはいつものメイド服姿でアンテナショップ内の様子を見ている。

このアンテナショップは、草加市ARゲームギガフィールド内部に併設された物で――2階にオープンした施設だ。

アンテナショップと言っても様々なメーカーやARゲームの分野で異なる事もあって、ギガフィールド内だけでも20以上は存在する。

それでも一部エリア限定のプレオープンと言う感じは否めない。実際、7月に一部がオープンした形だが――8月のグランドオープンに向けて急ピッチで作業が進められていた。

「あの時も全部がオープンしていた訳じゃないけど――」

 客足はまばらではなく、そこそこの人数はいると考えられる。ARゲームへの関心度が高まっているのは良い傾向だろう。

将来的にはARゲームもイースポーツとして世界進出を視野に拡散される――プロゲーマーとしては、ここからが出発点と言えるかもしれない。

「これが、ARゲームの第一歩――」

 アークロイヤルの目の前には、新製品とは違ったARガジェットが置かれている。

これらの商品は不良在庫の類ではないが、割引となっている商品各種だ。どうやら、新製品との入れ替えで割引となっているのだが――。

「いずれ、他のARゲームもこのようになっていくのかな――」

 若干さみしい表情もするのだが、全てのARゲームがアカシックワールドの様な流れで終了する訳ではない。

中にはネット上でも話題にならずに終了する作品もあれば、ネット炎上に利用されてサービス終了する作品もある。

だからこそ、プレイ出来る限りはARゲームをプレイしてゲームを楽しもう――そうアークロイヤルは考えた。



###エピローグその2



 それからアークロイヤルはプロゲーマーとしての貫録を見せ始め、期待の新人と呼ばれるまでの実力を得た。

丁度、7月中旬ごろの話となるが――その時期にはアカシックワールドはサービス終了、新たなARゲームがサービスを開始している。

新規プレイヤーの受付が終了している関係もあって、別の意味で涙をのんだプレイヤーはいるだろうが――。

「やはり、アカシックワールドは忘れ去られてしまうのか――」

 若干深刻そうな表情で草加市ARゲームギガフィールドに姿を見せたのは、ヴェールヌイである。

何時もの賢者のローブを身にまとい、周囲のギャラリーからは注目度が高いのも――彼女の特徴だろう。

「今の我々に出来る事を――可能な事を進めていかないと」

 その後の彼女はARゲーム分野で活躍をしていく――。色々と思う部分はあるのかもしれないが。

その一方で、彼女はARゲームの世界を見てきた事で、コンテンツ市場が抱える問題点や可能性を見つける事も出来た。

それらを発揮するには――まだフィールドの整備が出来ていない可能性も高いだろう。

しかし、これ以上の悲劇の連鎖が起きれば――デスゲームが許されるような環境も出来てしまうかもしれない。

「このギガフィールドも、いずれはARゲームのイースポーツ化に伴う大型施設として動きだす事にもなるだろう。だからこそ――」

 彼女の目の前には、ARゲームのセンターモニターがあるのだが――そこにはある大会の宣伝CMが流れている。

『今、イースポーツが熱い!』

 CMに出ているプレイヤーはARアーマーを装着しているのだが、自分が知っているプロゲーマーではない。

男性プレイヤーのようだが見慣れない外見だ。ARメットの影響で顔が見えないと言うのも大きいのだが――。

「彼の言う通りに、ARゲームはイースポーツと言う新たなシステムを組み込む事で生まれ変わるだろう」

 冷静に分析する彼女は、CMが終わったのと同時に別のARフィールドのある所へと向かう。

やる事は他にもあるので――寄り道をしている余裕がないと言うべきなのか?



 7月15日、プロゲーマーとしての道を進む事になったアークロイヤルは、遂に念願のプロゲーマーへの第一歩を――と思われていた。

しかし、彼女はプロゲーマーになってもテレビ番組やメディア等に出る事はなく、それこそ隠れた存在として有名になって行く。

理由としては彼女なりにもあるのだろう。ジャンヌ・ダルクの一件で注目され、そこからタダ乗り便乗みたいにプロゲーマーになったという批判を回避する狙いもある。

今の実力を考えれば、彼女をタダ乗り便乗勢力等と言う様な人物はネット炎上勢力などの一握り――。

「これから――私はどうすれば」

 プレイするゲームの種類が多く、悩みの種は別にあったのだろう。自分に合う様なARゲームは――と思った中で、センターモニターを見る。

次の瞬間には、イースポーツ大会の開催を告知するニュースが流れていた。主な種目はコンピュータゲームの中でも格ゲーやFPSと言った物が目立つ。

その中で、彼女はあるゲームが種目として選ばれていた事に驚く。それは――ロケテストで見たことのある、あのリズムアクションゲームだ。

「ファントランス――」

 ゲーム名はロケテストに関しては仮の物だったので、ファントランスが正式タイトルと言う事になる。

このゲームならば、何とか自分でもプレイ出来るだろう――そう思っていた。

「やはり、そのゲームに興味を持ったか」

 アークロイヤルの隣に姿を見せたのは、ヴェールヌイである。どうやら、出会ったのは偶然らしい。

ヴェールヌイはファントランスに興味を持つものの、リズムゲームと言う部分でプレイを躊躇していると言ってもいいだろう。

「あなたはどうするの? ヴェールヌイ?」

「それは君次第という事だろうな」

「まさか、それって――」

「君がプレイすると言うのであれば、そのプレイをぜひ見て見たい――そう思っている」

 ヴェールヌイは、プレイを見学するだけでも非常に大きいだろう――と考えていた。

しかし、アークロイヤルもプレイするかどうかは決めかねている。

「既に君の知っているプレイヤーも何人かエントリーしているだろう。ジャンヌもエントリーしたらしい」

 ヴェールヌイは、アークロイヤルにアドバイスをするように――さりげなく、ジャンヌ・ダルクの名前を出す。

ジャンヌと言うと一連の事件で負のイメージが付いたような気配がするが、そんな事はなかった。

既に別の創作等でも使われているので、ジャンヌと言う名前があまりにも――と言う事かもしれない。

「なるほど――なら、私もエントリーしないといけないのかな?」

 アークロイヤルは――それが狙いと言わんばかりのヴェールヌイの誘導に対し、ふと何かを思った。

「これは、あくまでも強制ではない。君の自己判断に任せよう――ミカ」

 さりげなく、ヴェールヌイはまたもやミカの名前を口にする。これはアークロイヤルからもあまり言わないようにと釘を刺されたのだが。

「あーっ! やっぱり!」

 ヴェールヌイとアークロイヤルの姿を見かけ、早歩きでやって来たのはメイド服姿の斑鳩(いかるが)だった。

あれからアークロイヤルは、ヴェールヌイと斑鳩とも仲良くなり、VRゲーム時代が嘘のように一人でいる時間は減ったと言える。

「斑鳩も参加するのか?」

「当然! 既に有名プロゲーマーも参戦したし、これからブレイクする可能性は高いでしょ?」

 斑鳩もファントランスにはエントリーするようだ。そして、アークロイヤルの方も若干だが表情を変えた。

センターモニターでは別のARゲームのCMも流れているが――。

「じゃあ、私もエントリーしようかな? ファントランスに――」

「そうとくれば善は急げ――あのアンテナショップでファントランスのガジェットを売っている。そこへ行こう、ミカ――」

「またミカって言った――」

「凄いよね、ミカって――」

 ヴェールヌイがまたもやミカと言った事に突っ込む一方で、斑鳩はアークロイヤルではなくミカとつぶやいていた。

彼女の変化は、アカシックワールドと言うARゲームに触れた事、ジャンヌ・ダルクの様なプレイヤーと出会った事で変化し――今に至る。

ARゲームは戦国時代に突入するだろう。それこそ、様々な国と地域がイースポーツと言う分野で激突する構図が――もう二度と、デスゲームの様な争いが起きない事を祈るかのように。


 

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