第6話 なろうとした
そんなことに気付いていたら、あの少年は生まれなかっただろう。
親から生まれた子供でもないヒトから生まれた子供でもない動物から生まれた子供でもない。
しいて言えば
我々、私は、私は?ああ私は
違う。
書こうとしたことがわからなくなってきた、私は何故かしてどうかしてどうにかしているそれになりたいなりたかったなれるよね違う違う違うこれは違う。
生き続けていくうちにこんなことを経験するなんて思いもしなかったし思わなかった、私は既に死んでいるはずなのに生きている
ただの研究者なのに。
上司が憎くて部下が憎くて成果もイマイチで明日も分からない職業に就いてるのは迷惑だと妻には逃げられ子供にも逃げられた。
何でだ、お前が悪いからだ。
お前?私だろう?
きっと神様は
私は間違ってはいなかった、神様にお祈りはしたし捧げものはしたし幸せな毎日だった。
どこが?いや、幸せだったよ。
博士たちにも人類にも感謝しなくちゃならない
待て。
何を書いている?
こんなことを書いた覚えはないぞ、頭痛のせいだ。
何もかもが消えてしまったこの世界で私は、僕は、俺は――――――
わたしはなってみせるよ、それに。なりたかったんだから
「なってみせるよ、なりたかったんだから。
なりたいんだよ、なりたかったんだから。
違う――――
そんなものに
なりたくは、ない。
でもなりたかったんだ
お母さん、お父さん、お兄ちゃん、お姉ちゃん
みーんな
だからね。」
―——————明日も早い、太陽の昇る位置がわからない。
目を覚まさなければ。
きっとまだ何とかなる、この世界を何とか何とでもどうとでもどうにかして
「したいんだね。」
「したいんだ。」
「なれるんだね。」
私はいつもの頭痛に悩まされて日記帳を書き続けている、もう既にこの世界が
生きるのは辛くないの?
辛いよね。
なりたいんだ。なりたかったんだ。
ああずっと声がする、娘に似た声だ―――――
でもまやかしだ まやかしなんかじゃない そこに居るんだから みんなが。
特になし Dの1 @tokugawaieyasu
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