第40話 DAG

2月はライトコインを使った決済システムが導入された。

ライトペイと呼ばれ、これが好材料になりライトコインの価格は高騰していった。


Liskはリブランディングを果たし、その真価を発揮するための準備に入った。


ミナトは2018年という年に感謝するほどたくさんの情報を得て、これから1年かけて起こる仮想通貨のイベントに心を高鳴らせていた。


海外に目を向けてみれば実にたくさんのコインがある。


どのコインもまだまだ課題は山積みなのだ。しかし、その課題の一つをLiskは解決するかもしれない。


リスクが持つ非公開の技術、サイドチェーンによるセキュリティの強化・更新というのは現存のコインを実に扱いやすい柔軟性のあるコインへ変えてくれる代物の技術である。


きっとこのコインが登場していなければ仮想通貨全体が行き止まりの壁にぶつかっていたに違いない。


取引所での取り扱いが多いメジャーコインたちにも課題があり、それを乗り越えないと現実的に不可能な技術や将来の展開に支障をきたすような問題がある。


しかし、新しいブロックチェーンの技術、新しいプラットフォームも構築されつつあり、イーサリアムのプラットフォームだけではなく、それとは別で活躍の場を広げることができるOSが登場しつつあった。


ここでミナトが目をつけた面白い海外の通貨がある。

IOTAである。


アイオータと呼ばれているがゴロがよくないので覚えにくいと思ったミナトはイオタと省略して読むようにしている。


これは厳密にはブロックチェーンではない。今までの仮想通貨の常識をいきなり覆してしまったコインである。


既に大手企業の多くがIOTAに興味を持っているらしく、IOTAの運営グループへの出資を大手企業はこぞって買って出ている。


このコインはブロックチェーンではなく前の情報と次の情報をうまくつなぎ合わせて自由に網の目を移動するような小さな契約の連続がつながったプログラムだといえるだろう。


これをDAG(Directed acyclic graph)と呼ぶらしい。


日本語にするともっとわかりにくく有向非巡回グラフと表現されていた。


このIOTAにもまだまだたくさんの課題があり、その課題の一つにブロックチェーンでないが故の問題も存在していた。


前の情報と次の情報をつなぎ合わせていくうちに拡散されすぎるのではないか?という問題。

さらにセキュリティをどうするか?という問題だ。


ミナトはここで一つのひらめきを得た。

これはミナト独自が考えた打開策であり、それでも現実的な解決をするなら起こり得ることだった。


もしかしたらリスクが持つサイドチェーンの技術、セキュリティだけの強化と更新が他の仮想通貨でも可能になるのなら「仮想通貨は柔軟性を持ち、今より一つ上の段階にいけるのではないだろうか?」という推測である。


いやむしろリスクが持つサイドチェーンの技術を主力となるメジャーコインが導入することによって他の仮想通貨に新しい未来を示す道しるべとなるはずだ。


リスクがリブランディングすることにはたくさんの意味が込められているとミナトは確信した。


そして、いくつかの点で存在する可能性が線でつながりを見せていることに気づいた。


他の投資家たちの考えはわからないがミナトの中でそれが現実に起きることのように納得していた。


どうやら彼の中では整合性が取れてリスクが他の仮想通貨たちが抱えている悩みの一つを解決してくれるという希望的観測であった。


リスクだけではなくアイオータも仮想通貨の新しい可能性を示す一歩である。


ミナトは中学2年生になり、あと2ヶ月ほどで中学3年生だ。


中学生活もあっという間に終わってしまう・・・。


ミナトとヒナちゃんはほとんどケンカせず仲良く過ごしている。


同じ中学生でもミナトは少しだけみんなよりオーラがあり輝いていた。

周りの友達や先輩からも「なんだかいつも楽しそう」と言われるようになっていた。


みんなが受験や学校の人間関係、部活に悩んでいるこの時期に彼は楽観的に中学生としての生活を楽しんでいた。


親の元で暮らしながら500万円以上の資産があるミナトは”未成年として経済的自由”を手にした状態である。


高校生になってもバイトをする必要がなく、もしかしたら親の出費なしで自分の資産からお金を捻出して高校の入学費や学費を払っていけるかもしれない。


このまま投資を続けて資産が倍に増えるなら大学や専門学校に入学するのも自分ですべて費用を出費して進路を選択できる。


もちろん高校を卒業して働かずに投資家のまま海外へ移住する可能性だってある。


彼には将来に対する無限の可能性が拡がっていた。


それをずっとそばで支えてくれているのはヒナちゃんである。

ミナトはヒナちゃんにすごく感謝していた。彼女の精神的な支えがなければきっとこんなに投資を楽しくできていなかっただろう。


メイちゃんに言い寄られていたときはヒナちゃんは不機嫌であったが、ミナトとヒナちゃんは二人で話し合ってタケル君とメイちゃんの縁を結んだことで問題を解決できることを理解した。


二人で問題を解決できることがわかると二人の愛はより深まった。


あとミナトがユメリちゃんを振り切ることができれば・・・問題は何もない。


それでも前よりはユメリちゃんのほうから距離を置いてくれている気がするミナトであった。

もしかしたら新しいターゲットを見つけたか・・・、本当に好きな人ができたのかもしれない。


あと2ヶ月すればミナトたちは中学3年生になる。これからみんな進路は別々になり将来の方向がある程度、決まってくる。


小学校から同じだったみんなと一緒にいられるのもあと1年だけになった。

なんだか切ない。


仮想通貨の投資をして始めてから”未来”に対して期待することが多くなり、実際にその期待通りに仮想通貨は右肩上がりだ。


それに企業との業務提携やリブランディング、アップデート時に起きるエアドロップにハードフォークでの分裂・・・・。


いくつもの困難や好材料がありながら仮想通貨は”未来”のために前に進んでいた。


その仮想通貨に夢中になっている間にミナトはあっという間に4年目の投資生活を迎えようとしていたのだ。


学校での出来事よりも仮想通貨の不安材料やハッキング被害に心を動かされていた。

そのため学校で起きる些細な出来事にはまったく動じなくなっていた。


学校で起きる些細なトラブルでさえ”愛おしい”と思えるほどミナトにとって同級生の友達たちが大切であった。


担任の先生や美術部の顧問である秋山先生にも感謝しているミナトである。

出会ったこと、勉強を教えてくれること、一緒に楽しい時間を過ごせること、すべてに感謝するミナトである。


心のどこかで彼は浮世離れしてしまった自分がいる気がしていた。


投資家になり小学6年生から中学2年生の3年間で500万円以上の資産を作ったクリプトカレンシーボーイと呼ばれる伝説の人物になった彼の頭の中では”社会に対する固定観念が揺らぐ”のである。


日本という国はみんなが同じで在りたいと思うような団体心理が強い。

幼稚園・保育園を卒業して小学校に入る。小学校を卒業したら中学に行く。

一般的な流れが固定されていて誰もその流れに疑いを持たない。


義務教育は必要ではあるが高校や大学に行くとき、就職か進学かを選ぶとき、その進路を選ぶときでさえ親の保護が必要である。


ミナトのように投資家になり自分で資産を作って、いくつかある進路を自分で決めて出費するというケースは少ない。


つまりミナトの存在は、これからミナトのように小学生から投資をするという世代の走りだったのかもしれない。


今までは義務教育を経て進学か就職かを選択するのが当たり前だったが、時代が変わってインターネットの普及と仮想通貨の取引所のインフラ整備が整うことによって、子供の頃から投資をするのが当たり前になっていくのではないか・・・・?


ミナトは自分のような道を進む子供がこれから増えてくると予感した。そして、社会に対する固定観念の揺らぎはこれからの時代の未来に対する予兆であると悟った。


義務教育とは別に子供の頃から投資をする時代が来る。


それは世界が同じように同じ方向で動くことを意味していた。


18才を迎える頃にたくさんの億万長者が誕生しているだろう。


そんな時代はすぐ目の前まで迫ってきている。


本格的に実現されるのは2020年頃になるのかもしれない。


これが情報化社会、通信技術がもたらした革命である。

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クリプトカレンシーボーイ hiroumi @hiroumi2017

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