SAVE2 大陸へ、でも失敗
いつも隊列で進むキーランたちがどうやって弱ったグレディン村長を抱えてきたのか、ヴァンデル村の入口に気付けば村人が集まっていた。
「お父さん!」
真ん中にいたグレーテがまっすぐ近寄ってくる。
「キーランさん、父を救っていただき本当に感謝してます」
深々とお礼をするグレーテに、
「ホントに大変だったわねぇ、ね、シャムス、タイサイ」
ビエラはキーランには目を向けず言った。しかし、キーランは気にせずに言う。
「まずはグレディン村長の回復を」
集まった村人はわいわいガヤガヤ、何故か体を動かしながら見守っていた。
そして、全てが暗くなるように夜が更けていく。
~~翌朝、何故か光の扉の前~~
「いやー、助かった、はっはっはっ」
グレディン村長の豪快な笑いが空へ飛び出していく。すっかり体調は良くなったようだ。
並んで立つグレーテと共にキーランたちと向かい合っている。
「まさか洞窟内に生えるキノコを採りに行って、お化けキノコが生えていたとは」
「お父さんがお化けキノコに採られそうになってどうするの」
そう言うとグレーテはキーランと目が合い微笑んだ。
「そもそもどうして聖なる洞窟に魔物が現れたの」
怒ったように聞いてきたビエラにキーランが困っている。
「魔王ルキフグスの影響か強まっているのかな?」
「そりゃ、そうかもな。この30年の魔王軍の動きが鈍いのがおかしいからな、そもそも」
キーランの不安にシャムスが応じた。今まで無言だったタイサイが続いた。
「・・・・・・それで、グレディン村長、洞窟にキノコ採りにいった目的は?」
「そっ、それは・・・・・・グレーテが誕生日だったから、ご馳走に好物の洞窟のキノコを採ろうかと」
頭を掻きながら笑って答えたグレディン村長がたまらず提案する。
「それではキーランさん、ご希望通り光の扉を通れるように準備いたしましょう」
ヴァンデル村にある光の扉の管理を任されてきた自信の表情が村長に胸を張らせているようだ。
光の扉の傍らに立ったグレディン村長がキーランたちに前に出るように促した。
「い、いつでも通る準備は出来てます」
代表でキーランが拳を握りしめながら用意を伝えてきた。
「キーランさん、そんなに緊張なさらないで。わたしたち一族は矛の女神様から光の扉を開け閉めすることを託されたの。一族の長であるお父さんがその代表よ、任せて」
「それも、そろそろ若い世代にゆずるときがきているようだ。わたしの身に万が一のことがあれば。そう、今回のような祈りの洞窟の騒ぎのような・・・・」
「なに言ってるの?お父さんが無事に・・・・」
グレディン村長とグレーテのやりとりが長くなりそうだと感じたキーランは、ただ頷きを大袈裟に繰り返した。
『ペチャクチャペチャクチャ』
『ペペチャクチャ、ペチャクチャリペチャ』
グレディン村長とグレーテの会話が早口のように話され、なんとなく聞き取れない。ので再びキーランたちは頷きを止め聞くことに集中した。
「・・・・で、いずれわたしの役目はグレーテが」
「んもうっ!お父さんったら。まだまだ元気に光の扉の管理できるでしょ」
要約すると二人の内容は、グレディン村長が倒れてもグレーテが責務を引き継げばよかったらしい。
少なくともタイサイはそんな冷めた目でいる。
「あのー、そろそろ」
キーランはキーランで背中を押し蹴るビエラという圧力でたまらずグレディン、グレーテ親子の間に転び出た。
「お!そうでした。では光の扉の開きましょう」
一歩前に出て両腕を広げたグレディン村長が叫ぶ。
「オープン・ザ・セサミ!」
光まぶしい扉が静かに開くと、向こうにまっ白で埋まった空間が見えた。
『おおっ!』
魅入るキーランたちが叫んだ。
「さあどうぞ、お行きなさい、オクワ王国へ」
グレディン村長のかけ声、
「行ってきます!」
真っ先にキーランが答えて、一直線にキーランたちは光の扉を通り過ぎていく。
「霧でもここまでひどくは無い」
先頭のシャムスが同意を求めるように言う。
「魔王ルキフグスの影響で扉を繋ぐ範囲が狭まっているんだ!おそらく唯一オクワ王国に行くのでさえ道のりが遠ざかっているんだよ!」
キーランが不安を和らげようと力説した。
「それでも、わたしたち光の扉に入ってからいつまでも歩き続けていない?!もう、ここを通る前に
ビエラの悲鳴にタイサイが地面に顔を向けたまま呟いた、のだった。
「これは俺たち
世界の外れから見習い《ノービス》が魔王を討ちに旅立ちます~王道RPGのすすめ~ 夏梅はも @natsuumehamo
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