死神業、はじめました
@maruko0123
第1ー1話 最初の依頼人
朝8時半、死神事務所の電話がなる。
ベルで起こされた黒霧リンはに電話を睨みつけた。
「今日からは営業時間は18時から。
私としたことが営業時間を書かないなんて。こんな初歩的なミスをおかすなんてシキにバカにされちゃう。さっさとホームページを更新しよう」
リンは女の死神だ。
前世は人間だったが20歳で自ら命をたった。
神様から生まれ変わるか、
死神になるかを問われた時に迷わず死神の道を選んだ。
人間には絶対になりたくなかったからだ。
死神の仕事は一言で言うと寿命を全うしてない人の魂を奪うこと。
どの人間の魂を奪うかは死神の裁量に委ねられる。
リンとパートナーの男の死神の神宮寺シキも過去の死神たちと同じように数多くの人間の魂を奪ってきた。
しかし、本当にこの世から消しさるべき人間なのか。
正解がないからこそ、2人は疑問だった。
だから、人間の依頼を受けることにした。
シキはベルにも気がつかずいびきをかいて寝ている。昨日は遅くまで通信制のMBAの学校の課題をやっていたようだ。
シキは事務所を開設した時にプッシュ型の死神業からプル型の死神業への革新だと自慢気に語っていた。
シキはよく学校で学んだ知識をひけらかしてくる。
リンはホームページを更新して、再び眠りにつくべく睡眠薬を二錠飲んだ。
2度目の電話は18時きっかりになった。
「はい、死神事務所です」
シキが電話にでる。
「本当に死神さんですか?」
電話の声はひどく小さくて震えていた。
「信じるも信じないもあなた次第です」
「ここにかけてきたということは依頼ですよね?」
「はい。夫をお願いしたいです」
2人は依頼者と面会することにした。
まずは簡単なアンケートに記入してもらう。
対象者のスペック
名前 太田明人
年齢 42歳
職業 IT会社 役員
子供 12歳 女児
依頼理由
結婚してからも100人以上と身体の関係を持ち、つい最近若い彼女が妊娠したから別れてほしいと言ってきた
当事務所を知ったきっかけ
インターネットで殺したい 夫と検索
シキはアンケート結果をみてまず、
「俺のSEO対策は完璧だ」
と自慢気に鼻をならした。
SEOというのはネットで検索した時に上位に出てくる仕組みのことらしい。
リンはシキに言われるままに物騒な言葉をたくさんキーワードに入れ込んだ。
警察にみつかるのは時間の問題だと思う。
話を目の前に座っている依頼人に戻したい。
リンは女性に尋ねた。
「お子さんはお父様がこの世から仮に消えたとして、いいんですか?」
「構いません。父親のことはATMとしか思ってませんから」
「我々の調査の結果であなたの希望に添えない場合もあります。」
「はい。どんな調査があるのでしょうか?」
その言葉にシキがニヤリと笑った。
「我が死神事務所ではLQ値を計測します。LQは生きる価値を点数化したものだと思ってください。あくまでアナログではなくデジタルな判断です。もし、LQ値が基準よりも低ければ、お望みどおり旦那さんは数日でこの世から消えるでしょう。」
リンは重ねた。
「ご家庭と会社、そして相手の女性にも接触を計らなければいけません。
テストにご協力をお願いします。」
女性は困惑して答えた。
「もちろん。ご協力させていただきます。
それで、報酬はおいくらぐらいお支払いすれば良いですか?」
「実はあなたはお客さん第一号。報酬を決めていませんでした。相場なんてないからどうしようかな。今まで報酬なんてもらったことないし。」
リンがぶつぶつと独り言のようにつぶやくと、シキは答えた。
「俺たち死神はお金には不自由してないんだ。だから、俺たちが欲しいもの一個ずつもらおう」
「私、新型 iPhone!」
リンが今日1番の大きな声をだす。
「俺はコムデギャルソンのTシャツかな」
依頼した女性は太田かおると言う。
かおるは目の前の2人に明らかに困惑していた。
夫は本当に憎い。
自分を裏切り続けたあげくに自分と娘を捨てようとしている。
でも、この自称死神のこの人達はお金もとらず目的はなんなんだろう。
快楽殺人?サイコパス?
最後は私も殺されるのだろうか。
かおるの沈黙にシキが気がついた。
「ま、死神って言われても俄かには信じがたいよね。調査する過程で俺たちが人間じゃないってきっと信じてもらえると思うからさ、とりあえずこの契約書にサインしてよ」
かおるが手渡された紙をみると、
太田かおると死神派遣事務所は契約を締結する。以下、甲と乙と呼ぶ。
1.守秘義務ー甲は乙のことは一切他言しない。
調査の過程で知り得た甲と乙両方の情報を調査以外には使用しない。
2.甲は乙のだしたLQテストの結果には一切関知しない。どんな結果がでても受け入れる。
3.甲と乙のかかった調査費用を負担し、
任務を終了時には報酬として、
a.新型iPhone
b.コムデギャルソンのTシャツ
を現物支給する。
と記載されていた。
あとは名前と捺印を押すのみの状態になっている。
かおるはこの人たちにかけるしかない。
それしか選択肢はないとサインをした。
リンは
「契約書だから割印と捨て印いるよね。」
とシキに確認した。
「あぁ。そうだな。それは忘れちゃいけないな」
かおるとは対象的に、
この2人の死神はひどく楽しんでいるように見えた。
死神業、はじめました @maruko0123
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。死神業、はじめましたの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます