□□□16
後日譚がある。
警察が改めてサイジョーの家を調べ、その後片付けをしていたときのことだ。
この原稿の山をどうするべきか、そろそろデジタル化しないと、本当に劣化して読めなくなるんじゃないか。親友の遺品なんだから、もうちょっと綺麗にしまった方がいいんじゃないのか。
そんな相談の中で、華凜が一通の手紙を見つけた。
それはいわば本当の遺書だった。
遺言書とは別に書かれた、独り言のような遺書。
あった場所はサイジョーのデビュー作、著者献本のうちの一冊。ぎゅっと押し込んであったそうだ。
美しい、手書きの遺書だった。
拝啓、みんなへ
ときどき、生きている意味が分からなくなって苦しいときがあります。そういうときは、よく死んでしまいたくなります。
でも、朝になれば絶対に誰かが訪ねてきて、朝御飯を作ってくれたり、大学に連れて行ってくれたり、洗濯物を干してくれたりします。
最近では一緒に夜更かししてくれるひともいます。おかげで僕は甘えたちゃんです。
全部、本当はひとりでできます。ずっとそうしてきました。
ひとりでしてしまったら、誰も構ってくれなくなるような気がして怖いです。
だから、甘えさせてください。甘えさせてくれるみんなが大好きです。
もし、僕がなにか不慮の事故とかで自由に思いを伝えられないようなことになったら、代わりにみんなが僕のことを伝えてくれませんか。
小説ならいっぱい書いてあります。全部勝手に公開してもらっていいです。売れると思うよ。
それ以外にも、僕に関することは全部好きにしてください。みんなに託します。
ちゃんとした遺言書で、誰になにをお願いするか指名しておきました。公証人さんに聞いてみてください。迷惑をかけるけど、お願いします。
この遺書的なものは恥ずかしすぎるので、公証人さんにも預けません。
僕にもしなにかあったらきっと誰かが見つけてくれると信じて、部屋の中に隠そうと思います。
こんなものが役に立たないで朽ちていくことを祈ります。
斎城 拝
その手紙の日付は、サイジョーが最後に迎えた大晦日になっていた。
親友を殺した奴を探している 姫神 雛稀 @Hmgm
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます