見たことのない景色に、君は立つ

西木 草成

近い


 陽の目を浴びることのなかった群青色の世界に船は浮かぶ。


 積み荷はとうの昔に捨てた。


 どこに行くかもわからぬまま、船は凪いだ波の上をただ漂う。


 どこに行くわけでもない。


 ただ伝えたいことがある。


 夜明けはまだ来ない。だが、醒めなくてはならないのだろう。


 どれだけ漂っても意味はない。


 雨風に打たれた、凍える夜もあった、死にたいと思った日もあった。


 それでも太陽は昇ってくるのだからしょうがない。


 明日が来てしまうのだからしょうがない。


 無駄にした日々だけが重なり、いつしか何を伝えたいのかもを忘れた。


 夜は暗い、だから待つのだ。


 目が覚めてきたか、旅する少年たちよ。


 俺らの夜明けはもうすぐそこだ。


 地平の彼方、その向こうに待っている人がいる。

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見たことのない景色に、君は立つ 西木 草成 @nisikisousei

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