第4話トリックオアトリート!

吸血鬼のお爺ちゃん(?)から名前聞くの忘れてましたごめんなさい。



 前夜祭では、本当に大変だった。

 あの事件のあと、俺はピラクに事件解決を伝えるように頼んだ。ついでに、あの飴玉も渡すように言った。

 そして普段の姿に戻って再び特設ステージに戻ると、切り替えが早いことにすでに仮装コンテストは再開されていた。

 今年の優勝者はなんとナタリだった。彼女は迫真の演技で、審査員たちをとりこにしたらしい。カルハから聞いた話なので、確信度は低いけれど。

 吸血鬼からのお詫びの品、大量のお菓子はその場にいた猫全員に配られていた。

 今日は、ハロウィン当日。

 昨日、全力を尽くしすぎて早いうちにふらふらになってしまった僕は、仮装コンテストのあとすぐに家に帰ってしまった。カルハとナタリは一緒に前夜祭を満喫したのだろうか。

 「「「トリックオアトリート!!!」」」

外で、子供が騒いでるのが聞こえる。朝から元気だなぁ。昨日は前夜祭ではしゃいでるはずなのに。僕はといえば起きたはいいものを、昨日の疲れがまだ残っており、布団の中で丸くなっている。カルハかナタリが家に来たら起きようそうしよう。

 「ファミ、カルハくんとナタリちゃん来たわよ」

母さんの声が聞こえる。もう来たのか、とむくりと起き上がったとき、

「はよー! トリックオアトリート!!」

カルハが僕の部屋の扉を勢いよく開けて入ってきた。後ろにナタリもいた。

「トリックオアトリート!」

ふたりとも元気だな…。

「おはよう。お菓子はそこの机の上に……」

「せんきゅー」

カルハがすぐにお菓子を取った。

「トリックオアトリック、お菓子くれてもいたずらするぞ、なんて言わないよね。僕もういたずらはこりごりだから」

昨日の件は本当に疲れたな。できれば家から出たくないんだけど。

「昨日の優勝商品有効活用して、たくさんもらってきたわよ! 感謝してね!」

ナタリが紙袋を床に置いた。どさりと、重量を感じさせる音が部屋に響く。

 着替えるからとふたりを部屋から追い出し、すばやく着替える。

「着替えたよ」

そういって部屋を出る。

「昨日はお疲れ様。大丈夫だった?」

ナタリが言う。

「まあ、なんとか?」

僕が答えると、ナタリはなにそれと言って笑った。

 町は、昨日の前夜祭に負けないくらいに声があふれていた。昨日は大人も盛り上がっていたが、今日は特に子供が多い気がする。

「お菓子貰いに町まわるか?」

カルハが言ったが、僕はいいよといって断った。町を練り歩くほど元気じゃない。

 「トリックオアトリック! お前はお菓子くれてもいたずらしてやるぜ!!」

バクラだった。彼はハロウィン当日もやる気に満ち溢れていて、昨日とは違う仮装をしていた。大抵は二日間同じ仮装をするんだけど。てか、トリックオアトリック……ならお菓子あげなくてもいいか。

「じゃあいたずらしてもいいよ、でもお菓子はいいの?」

僕が聞いてみると、

「だめに決まってるだろ! お菓子もよこせ! いたずらもしてやる!!」

何だそれ理不尽。

 仕方ないからお菓子を渡す。

「うぉらあっ!」

バクラが飛び掛ってくる。うわ、これはもはやいたずらというよりかは暴力に近くないか。

「……はぁ」

僕は未だに昨日の戦闘時の感覚が抜けていなかった。バクラの動きがよく見える。かわすのなんてたやすいことだ。

 カルハとナタリを巻き込まないようにしてかわす。バクラが、音を立てて地面に倒れる。

「ってえ……」

そりゃまあ、転べば痛いよな。だが僕はよけただけだ。バクラが悪い。

 「バクラ、どうした!?」

「こいつらにやられたのか?」

バクラの取り巻きが来た。厄介なことになったな。

「カルハとナタリは何もしてないよ。といっても僕も、ただよけただけなんだけど」

僕はふたりを巻き込まないようにうまく挑発した。

 三人がかりで飛び掛ってくる。

「くたばれっ」

「バクラのかたきだ!」

こいつらは以前僕に軽くあしらわれたことを覚えていないらしい。さすがに傷つけるのはまずいから、魔力は使わない。全部よけるだけにしよう。

 まず右から。そのあと左から来ているので、あえて右に近寄る。相手が一瞬ひるんだのを見て、今度は後ろに一歩。

 タイミングを合わせてすばやくしゃがみこむ。右と左の相手は正面衝突。すこしかわいそうだが正当防衛……いや、僕は何も手を出していないから自業自得かな。

「ふぬっ」

バクラが自身に加速の魔法をかけて飛び掛ってきた。けど、そんなのあの吸血鬼に比べたら遅い。

 僕はしっかりバクラをかわし、そのままその場を離れた。あれだけ転べばもう追いかけては来ないだろう。

 ハロウィン自体は面白いしイベントもたくさんあるから好きなんだけど、トラブルは起こるし、トリックアンドトリックしてくるやつがいるから疲れるんだよなぁ。


 とにかく。今年のハロウィンで学んだことは、

『トリックはもう嫌だ!』

ということだ。

 でもきっと、来年も似たようなことになるのだろう。

 まあ、それも悪くないかな。


 それじゃあ僕もこれだけ言わせてよ。

「トリックオアトリート!」



(おわり)

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ハロウィン番外編!ファミネコヒーロー 紅音 @animuy_fti

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