第9話東京羽生ストーリー

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数日後・・・

午後の昼下がり、暖かい日差しが差し込めている。

あの事件現場から帰って来て、久しぶりにテラスでお茶を楽しんでいた。大きな庭を眺めていると、明らかに入り口とは違う所から、見覚えのある男が歩いて来た。


「すいませんお邪魔します、豆澤先生。ミステリー列車ではお疲れ様でした。先生と少しお話がしたくてやって来ました。」

「ちょうどワシも話し相手が欲しかった所じゃった。まあ、座りなさい、探偵さん」

「では、失礼します」

清野はそう言うと庭を眺める様に椅子に腰掛けた。豆澤は二人分のお茶を用意し、清野と同じ様に座り庭を眺めた。

「今日は、私の推理を聞いて頂きたくて伺いました」

「ほう…」

二人は顔を合わせないまま話し始めた。


「今回の事件は川下さんと林さんの犯行でした。しかし、本当に二人で計画したのでしょうか?」

「…と言うと?」

「金のマスクと銀のマスクが現れたのに主役が出て来ていないんです」

「主役?」

「悪魔将軍です」

そう言うと清野はお茶を一口飲んだ。

「さっき二人に会って来ました。二人が犯行を行うきっかけは、差出人不明の手紙だったそうです。その手紙にはご丁寧に犯行のやり方、二人の出会い方まで書いていたそうです。逮捕後警察も調べた様ですが、手掛かりは一切見つけられなかったそうです」

沈黙が続いたが、清野は一息ついて

「豆澤先生…。私はね、あなたが悪魔将軍だと思っています…」

豆澤はまっすぐ前を向いたまま少し笑った。

「その根拠はなんじゃね?」

「神田さんの死体が見つかった時、遺書がありました」

「……」

「あれはあなたが置き、見つけた様に振る舞ったんだと思います。あの二人にその事も聞いて見ましたが、お互いが知らないと言ってました」

「……」

「豆澤先生、今回の列車事件を舞台にしたら、あなたの目から見て成功だったのでしょうか?」

豆澤は目を細め静かに話した。

「不思議なことを言う男じゃな、映画にした方が面白いんじゃないかね……」

「面白い……」

「そう……」

「それは、列車事故で亡くなった奥様に見せたらと言う事でしょうか?」

「どうだろう…」

二人は変わらず庭を眺めながら、話していた。


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「疑問に思っていたことを、もう一つだけ…。今日は敬意を払い先生と呼びましたが、あの列車事故で豆澤アキラは…。あなたは本当に豆澤アキラ監督なんですかね?」

「君の想像にお任せするよ…」

豆澤がそう呟くと清野は何かを悟るかの様に口元を緩ませた。


「そうですか…、豆澤先生、根拠のない推理にお付き合い頂きましてありがとうございました」


そう言うと清野は立ち上がった。

「いや、ワシも楽しかった…」


清野は豆澤の言葉に振り向きもせず歩いて行った。そして右手を軽く上げて呟いた。



「ごきげんよう…」



豆澤は溜め息を吐いて、考え深げに清野の後ろ姿を眺め続けた。


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「あっ!やっときたようです!」

「もー、清野さん急いで急いで!早くしないと開演に間に合わないですよ!」


「ごめんねごめんね~」


バタン!


清野が車に乗り込んだ。

花上の運転の元、メイ、ルミコとの四人で劇場に車を走らせる。車は自然に囲まれた昼下がりの田舎道を進んで行った。


彼らは今日、あの忌々しい事件後、再結成された悪魔指揮魔術団のショーを見に行くのであった。


「そういえばこの劇、まともに見るの初めてだよなー」


「花上さんに理解できるかしらねぇ?」


「なっ!ひどいなメイちゃん。ルミコちゃんの毒舌移ったんじゃないの?」



「死ねって事よ花上。」


「死ねって…。さすがに本家…。それよりあんな事件あったのに、ジャクソンさんよく劇団立て直しましたね?」

「殺人事件の再現らしいですから…話題性ありますよね。でも私はちょっと抵抗あります…。」


メイがややうつむきそう言った。


「うん、なんか寂しいね。人間の性なのかな…金儲けになれば何でもいいって訳じゃないのに…。」


清野もそうメイに同意した。


その時だ!


キィー!!


清野達を乗せた車が急ブレーキをかけた!

フロントガラスに一枚の紙が風に流されへばり付いたからだ。


「あっ!悪魔指揮魔術団のポスターですね。はあ、

≪あの話題の事件を再現≫

なんて書いてますよ。これをやる人の気がしれないなぁ。」


溜め息混じりに花上が言った。そして次の瞬間花上はそのポスターにあるなにかを発見した。


「あっ、あああこれ…」



花上が指差す箇所に全員が目をやるとそこには…




≪企画立案コロ助コーポレーション≫

と書いてあった!


「あちゃー!」


一同は皆頭を抱えた…。


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≪ポフォー!≫


そんなどんよりの空気を書き消すように列車の汽笛が聞こえてきた。

土手の上に目をやると、そこにはあの日のミステリー列車と同じ車種の列車が走ってきた。もちろんそこには悪魔の所行は無く、太陽の光が反射してなのか、列車は光輝き希望に満ち溢れているかように一同の目には写っていた。


≪もう心配ないよ≫


とメッセージを送るかのように…


車窓から子供達が手をふる。

一同は皆笑顔で手を振り返した…。



そしてそんなちょっと感動的な一同をよそに、車内のラジオからは

≪ハモリ倶楽部≫

のゲストとして呼ばれていた怪盗ヒゲゴリラこと山田健二に対する司会のハモさんの怒声が響き渡っていたのであった…


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悪魔将軍列車殺人事件 ごま忍 @SUPER3mg

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