第8話第1異世界人、対面




 ファイアリザードと戦う3人は高速で接近する影に気が付いていない。



「おいおい、ファイアリザードごときに手こずってんのかぁ!?」


 馬車に隠れていて確認できていなかった図体の大きい男が野次を飛ばす。


「そりゃ俺たちのランクじゃ時間も掛かりますよぉ」

「私たちのランクはまだEですよ。初心者抜けたばっかの人に無茶言わないでください」

「そうっすよ、ゲイルさんはAランクですからランクDのファイアリザードは余裕っすけどわっちらには無理っす」



 図体の大きい男の名はゲイル=イーガン。

 3人が言う様にAランクの冒険者である。


「ああ?そんなの気合いでなんとかなるだろ」


「なりませんよ!!そこどいてっ、範囲魔法撃つよ!」

「「了解!!」」


 掛け声とともに前衛にいた男二人は後ろに下がった。

 そして後方で魔法の準備をしていた女はファイアリザードに標準を合わせた。


 もうすぐそこまで影が近づいていた。


「行くよっ!フレ「フレイム!」...へ?」


 女が唱え終える前にそこに可愛らしい声の詠唱が割り込んだ。


 ゴォォォォォオォ...


 目の前にいたファイアリザードは高温に耐えきることもなく消し炭と化した。


「よしっ完璧だな」


「「「・・・・・」」」


 そこにいる3人はありえない光景を見たと目を見開いてあんぐりと口を開けている。

 ただ一人を除いて。


「ハァハァハァ...っく、ハァハァハァ」


 ただ一人の変態を除いて。


 後ろから聞こえてくる息の音に気がついた3人は一斉に振り向く。


「「「ゲイルさん!?」」」


「ハァハァハァ...全裸...幼女...」


 あ、やべ。こいつダメだ。あいつの目には痴性しか宿ってない。

 そしてまたバッとこちらを振り向いた3人が言う。


「「「痴女!?」」」


 ああ...やっぱそういう反応になるよなぁ...

 冒険者らしい女が叫ぶ。


「ちょっと男3人、馬車の向こうに行って!!早くっ!!」


「「お、おう...」」

「ハァハァハァ...」


「さっさとその変態どかして頂戴!!」


 女冒険者が激しい剣幕で男3人を睨む。


「「ヒィッ!?」」


 男2人は変態1人を連れて馬車の後ろに下がった。


「ふぅ...全く、ゲイルさんは筋金入りの変態だって噂では聞いていたけどまさかここまでとは...」


 一息ついたところで女冒険者はこちらを振り向く。


「お嬢ちゃん、でいい?いくつか聞きたいことがあるんだけど...」


「いいですよ、いくらでもどうぞ」


 お、お嬢ちゃんか...まあ予想はしていたが...


「ありがとう、それで一つ目だけど...なんで裸なのかな?」


 聞かれるよねぇ...そうだろうと思ったよ。

 さて、どう言い訳をしようか...


「え...あ、ファイアリザードに焼かれました」


「焼かれた!?見たところ怪我はないようだけど大丈夫?」

「はい、全然大丈夫です」

「そう、よかったわね。二つ目だけどあの魔法は何?フレイムって聞こえたけれど...」


 やべ、まずかったか?

 見た目はロリだからなあ。まず魔法が使えないのが一般の認識なのだろうか。

 ここは正直に言っておくべきか...


「フレイムです。これでリザードを倒しました」

「倒した!?あのファイアリザードを!?」


 女冒険者は一瞬驚くも「いや、あれだけの火力があれば倒せるはずか。しかしこの歳で魔法を使うなど...」とつぶやいたのが聞こえた。

 現に目の前で消し炭にされてたからな。


「お嬢ちゃんの名前は?」

「メルツライ=オーロロッサ、です」

「オーロロッサちゃんね、覚えたわ。ちょっと待っててくれる?」


 と言って馬車の荷台に乗り込んだ。

 待っている間あの変態がこちらを覗いてきたがすぐに引っ込んだ。

 何かを殴る音が聞こえたが聞かなかったことにする。


 しばらくすると衣服らしきものを持って戻って来た。


「今はこんなのしかないけれど着といてくれる?」


 そう言って手渡されたのは白を基調にしたワンピース。所々に薄く青が入ってる。空柄の逆と言ったところだろう。

 うん、ワンピースね...今の俺が着るのは何もおかしいところは無いのだけれども精神はまだ男のままだし。

 ね、ちょっと考えない?


「着てくれないとあの変態が何やらかすか分からないから...」


 そうだった...あのゲイルとか言う変態がいたんだった。

 あいつに何かやられるよりはマシか...

 そういう事にしておこう。


 自分に無理やり言い聞かせて俺の"男として"の部分を押しつぶした。

 ああ、これからもどんどん"男として"を削られていくんだろうな...


「ありがとう。サイズ合わないかもしれないけれど我慢してくれる?」


 そう聞かれ首を縦に振った。


「あっ言い忘れてた。私の事はニーナって呼んでね」


 こうして人生初のワンピースを着る事になった。


















 ・・・それとニーナ、マジ可愛い。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

転生吸血姫は世界をミる @nekoppoinanika

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ