いせかいくずれ

ソーニャ///スターチス

第1話 なのかでできるいせかい

いちにちめ

 主にヨーロッパの街並みをイメージします。イメージが難しい場合はG●●gle MAP等を使用してストリートビューで散歩をするとよいでしょう。めぼしい建造物や街並みを見つけてメモをつけます。ストリートビューに飽きてきたらその付近に猥雑な通りが無いかを調べましょう。きっとあなたの心に響く何かが見つかるはずです。あなたの中に明確なイメージと衝動的な欲求が発生したことでしょう。

 この行為を「神の目覚め」と言います。


ふつかめ

 前日にメモを取った内容の歴史や文化について調べます。専門用語が多いため読み解きが非常に大変ですが、そんな時は焦らずにW●k●ped●aの参照資料の文献に歴史漫画などが無いか探しましょう。きっとあなたの知的好奇心に火をつけてくれることでしょう。

 この行為を「神の探求」といいます。


みっかめ

 あなたは参照資料等を読み進めていることでしょう。しかしその量は膨大でとうてい一週間で読み込める量ではありません。しかしここで焦ってはいけません。資料読みに疲れたら、あなたが大好きなゲームに手を伸ばしてみましょう。するとあなたがこれまで調べてきた内容をそのゲームの中に置き換えたらどうなるかという妄想をしながらゲームをプレイすることになります。これがのちに発想の起爆剤となるのです。

 この行為を「神の戯れ」といいます。


よっかめ

 あなたはゲームに思いの他はまってしまいこの日は何もしませんでした。

 時には休息も必要なのです。一度頭をリセットすることでより良い発想を練り上げるのです。

 この行為を「ゴールデンタイム」と呼びます。


いつかめ

 あなたは何故かやる気が起きません。一日過ぎると自分が何をしたかったのかが曖昧になったようです。前日の休息は無駄だったと激しい後悔に襲われます。また、ついうっかり小説サイトの異世界ものを目にして自分の設定と丸被りな小説を見つけてやる気をさらに落とします。

 この行為を「神の落胆」といいます。


むいかめ

 やる気のないまま気が付けばもう夜になりました。

 あなたは理由のない焦燥感に駆られます。それはそうです。一週間で異世界を構築して見せると豪語したのは他ならぬ、あなただからです。

 あなたが、集中線の入ったコマにドアップで「できらぁ!!!」と、叫んだのを私は覚えていますからね。

 しかし、時間は漫然と過ぎていきます。あなたは何かに怯えるようにwebブラウザのタブを閉じたり開いたり、急に部屋の本棚の整理を始めるようになります。

 この行為を「神の焦燥」と言います。「神の焦燥」と、言います。

 へー。


なのかめ

 あなたは、後ろで腕組みをして待つ私に目をくれることもなく机にかじりついて必死で書いています。本棚から出したと思しきいくつかのファンタジー小説と、ゲームの攻略本と設定資料集などが机に山積みされています。私が咳払いをしたり物音を立てると過剰に反応する様子がなんともみじめです。

 この状況を「神(笑)」あるいは「神wwww」と言いますが、そんなことより締切もうすぐなんですけれど?


ようかめ

 それっぽい中世の街並みで、どこかで見たような剣と魔法の世界、モンスターも月並みなよくある設定。唐突に登場するどこかの国の大聖堂によく似た重要拠点。

 ようやく出してきたと思ったらA4用紙一枚分にそれがまとめてあるだけでした。なめとんのかオイと首を揺さぶったら簡単に落ちたのでそのまま放置してきました。

 ですが、そんなものから何故あそこまで話が広がるのか私には未だ持って理解しえません。この薄っぺらい紙きれから数百ページの物語が生まれているのもまた事実です。あの人は「神の見えざる手」とか言ってますが今時中二病だってそこまで尊大なこと言わないんじゃないですか!

 後一日休んでいるから実質七日とかふざけてんのかてめぇ!!!


 ともあれ、こうして異世界は今日も日本のどこかで産声をあげているのです。

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