技術管制主義によってコントロールされた人類社会と、その光と闇

 人類が宇宙に広く進出している社会。ワープ航法やナノマシンなどが実現しつつも、危険な技術は技術管制主義によって禁制技術に指定され、人の手から遠ざけられている。そんな世界で、新米警兵の少女アンジェラと、凶悪犯にして腕利きの人形戦闘機乗りルイス、そして彼らの乗り込む試験技術運用艦"テオフラスト"は、禁制技術災害の裏に隠された暗い真実を知ってしまう。
 この作品、まずは作品世界の設定が実に素晴らしい。超々高度な技術を持ちながら、その多くは禁制技術として手の届かない場所に封印されている。ときには漏出した禁制技術による大災害が起こり、その災害を利益につなげようとする大企業や集団の暗躍がある。得体のしれない不気味さがあります。こうした暗い面をもつ世界に対して、無垢で幼い理想主義者のアンジェラ、現実主義のニヒリストのルイス、そして理想を持ちながらも現実的な解決策を探る老練な艦長、ミハイロヴィチといった魅力的な人物が配置される。これで面白くならないことがあるでしょうか?
 惜しむらくは内容の重厚さに比例して筆がやや遅いことですが、間違いなく完結を待つ価値のある作品と言えるでしょう。現時点で傑作ですが、超弩級のSFスペオペ大作になることを期待します。