人類が宇宙に広く進出している社会。ワープ航法やナノマシンなどが実現しつつも、危険な技術は技術管制主義によって禁制技術に指定され、人の手から遠ざけられている。そんな世界で、新米警兵の少女アンジェラと、凶悪犯にして腕利きの人形戦闘機乗りルイス、そして彼らの乗り込む試験技術運用艦"テオフラスト"は、禁制技術災害の裏に隠された暗い真実を知ってしまう。
この作品、まずは作品世界の設定が実に素晴らしい。超々高度な技術を持ちながら、その多くは禁制技術として手の届かない場所に封印されている。ときには漏出した禁制技術による大災害が起こり、その災害を利益につなげようとする大企業や集団の暗躍がある。得体のしれない不気味さがあります。こうした暗い面をもつ世界に対して、無垢で幼い理想主義者のアンジェラ、現実主義のニヒリストのルイス、そして理想を持ちながらも現実的な解決策を探る老練な艦長、ミハイロヴィチといった魅力的な人物が配置される。これで面白くならないことがあるでしょうか?
惜しむらくは内容の重厚さに比例して筆がやや遅いことですが、間違いなく完結を待つ価値のある作品と言えるでしょう。現時点で傑作ですが、超弩級のSFスペオペ大作になることを期待します。
本格的過ぎて明らかにWEB向けではない作品ですが、それにしても凄いです……。
二千年前の技術暴走〈大喪失〉により太陽系を追われ、銀河に散り散りに漂流した人類。
その後永い時を経て成立した、五百以上の星系と二千以上の国家からなる統一銀河連邦。
銀河連邦によって管理された技術格差と、その停滞を破壊しかねない超オーバーテクノロジー〈禁制技術〉。
そんな未来の世界を舞台にした、禁制技術を巡るスペースオペラ&ロボSFです。
この作品、基本的に群像劇で進んでいくんですが、多様な価値観がぶつかりながら物語が動いていくのが圧巻です。特にアンジェラとルイスの凸凹バディ感がいい。禁制技術のほどよい厨二感と、王道ながら新鮮味もあるSF描写、裏で動く政治戦も好みでした。続きが楽しみな作品です。