story.6『泣かせた?』

「ちょ、エルミア!説明が雑いんだよ!みんなヒソヒソ言ってんじゃねぇか!」

エルミアはキョトンと俺をみる。

え、俺が悪いの?

「別にええやん、ミステイク?みたいな?」

は?

「エルミア、ミステリアスですわ。」

フィシャナがツッこむ。

てかよくわかったな、お前。

「ん?ミステリック?」

「ミステリアス。」

「ヒステリック?」

「馬鹿が…。」

フィシャナが私が紹介し直しますと

言ってくれた。ありがたい。

エルミアに任せるとヒステリックな

勇者候補になりかねない。


「えー皆さん?彼は【センマ】と言い、私たちが推薦した勇者候補ですの。彼を選んだ理由はズバ抜けた才能の他にありませんわ。」

待て、俺それ知らないんだけど。

「まず、MPの量。これが15000を超えています。」

この台詞にギルメン達は顔を見合わせる。あり得ない、と言われてる気がして気まずい。

「それからスキルとアビリティの数ですわね。もはや凄いを通り越して異常ですわ。」

てか、この世界にもスキルとかあるのか…ちょっとワクワクするな。

「おいフィシャナ、俺も自分のステータス見れんのか?」

「今ちょっと話してますの。」

あ、ごめんなさい。

めっちゃ冷たい声だったんだが。

「そして一番特筆すべきこと、それが

特殊スキル『転職ジョブチェンジ』…彼はスキルの使用により職業ジョブを変更できるのですわ。」

フィシャナのキメ顔に

ギルメンがワッと湧き上がった。

さてフィシャナ、話も終わったことだし

「で、だ。フィシャナ、俺にもステータス…。」

「それはまだ無理ですのよ。」

えぇ…なんか冷たくねぇ?


「ステータスを見るのは『能力鑑定ステータス・エキスパートオプション』というスキルが必要ですの。

まだセンマはそれを習得していませんから見れませんの。」

じゃあそれを習得すれば見れるように

なるんだよな?

「よし、今からそれ…。」

「あかんで?まだ無理や。」

お前らさっきからヒドくねぇか…!?

「なんで駄目なんだよ、嫌がらせ?嫌がらせか!?」

「違うわアホ!今日は転移でもうHPがギリギリなんや、やから今スキル習得なんかしたらアンタ明日死ぬで!」

結果、完全に俺が悪かった。

まさか転移するだけでもHPが削られるとは思わなかった。

フィシャナいわく、"次元の狭間を超える衝撃からHPが減るのでは"とのことだった。



「てか俺ほんと酷ぇーよな、これ。

あいつが俺の身を心配して止めてんのにあいつに怒鳴ったりして…。」

ギルドの一室でベッドに寝転がり天井を眺めながらエルミアのことを考える。

ここは来客者用の部屋だとエルミアが

教えてくれた。

エルミアがあの後もいつも通り接してくるから俺も謝るのとか、いらないのかって思って…いや、言い訳だ。

人に謝るとか今まで無かったから怖かっただけだろ?


俺はエルミアとフィシャナの部屋の

扉の前で深呼吸していた。

ちゃんと謝んねぇと、後悔する。

ノックをするとフィシャナが

扉を開けた。

俺を見て聖母様みたいに微笑んでいたから多分全部見透かされてんだろう。

「エルミアはこちらですわよ。」

フィシャナの指差した先には

丸くなった布団があった。

耳をすますとヒックヒックと

しゃくりあげるような声がする。

泣かせてしまったのか、と自分を殴りたくなるが、そんなことをしたってただの自己満足だ。謝る方が先。


「あ"ー、その…なんだ?…怒鳴って……ゴメン。」


「…………。」


返事が、無い。

フィシャナはクスクス笑っている。


これは、まさか…


エルミアが動いたのだろう、布団がめくれ中から赤い顔をしたエルミアと目が合う。


はぁ…

これが照れて赤面とかなら

まだ分かるけどよぉ。



「んぁ〜?センマァー?ヒック、お前も飲むか〜!ヒック、ニャハハハ!」


酔ってた。



俺の葛藤を返せぇぇええ!


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勇者候補に推薦されたらしい…知らんけど。 篠雪 薊 @uirou0408

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