「お気に召すまま」

「好きです」


 緊張した顔の彼に、私は「ばっちり」と笑った。


「ちゃんと言えてた。これなら、好きな人に伝えられるね」


 私の言葉に見せる、君の笑顔と言ったら。所詮、私は練習台。その笑みは、君がお気に召した誰かのモノになる。


「じゃあ本番」


 不意に彼が言った。さっきよりも固い顔で、私を見つめて。

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140の泡沫 綾坂キョウ @Ayasakakyo

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