other side:夜想

「どうして私には何もないの?」

 

夜。明かりの消えた部屋。一人の少女がベッドの上でうずくまっていた。少女の瞳はカーテンの隙間から入る月明かりを映し、煌めいていた。しかし、彼女の心は、星の無い夜のように、深い闇に閉ざされていた。

 

「どうすればいいの?私は……」


夜風がカーテンを揺らす。それに合わせてひらひらと舞う月光が、少女に問いかける。君には何もないのが何故か、わかるかい?

 

「わからない」

 

じゃあ質問を変えよう。何故君には彼らのような力がないのか?記憶は彼らと同じように残っているというのに?

答えは簡単だ。


少女にはカーテンの影が笑っているように見えた。しかし、何を笑っているのだろう。その時、少女は何かを聞いた。ただ、それを聞いたのは耳ではなかった。聞き慣れた音が聞こえる。少女の胸の奥の、閉ざされた部屋を、ノックする音が。


『答えは簡単だ』

「やめて」


少女は布団に顔をうずめ、五月蝿い月明かりも遮ってしまう。それなのにどうして、どうしてか、少女の瞳は光を、確かな煌めきを感じていた。

 

そしてそれと同時に、少女は花の香りを感じた。それは先程の声と違って、確かにそこにあるものだった。

  

そうだ、この香りは、きっと夜風が運んできた。少女はそう自分に言い聞かせ、深い眠りに、空虚な大穴に身を投げる。

 

やがて間奏曲が終わり、再び舞台の幕が上がる。

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children war 待屋 西 @gakuho

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