最終話 確率不明の命たち

1年、2年、3年が経った。

俺は時間があれば患者の会に顔を出したり、介護を手伝い始めた。


そしてその瞬間を、たくさんの人が消えていくところを見た。


許してもらえるなら、彼らと写真を撮った。


せめて俺の中で生きていけるように。


アルバムは何冊にもなった。


一人一人がそれぞれの生き方をした。

そして、9階病棟にやってきた。

それぞれの覚悟を決めて。


たくさんの終わりを見ても、葛西さんと森下さんの終わりはやはり忘れられない。


毎月病院に通う度、ヒマワリを見る度、夏が来る度。

届いたけれど届かなかった恋のことを思いだす。


夏は賑やかだけど、暑い。

そうもらした女の子のことを、季節が巡る度思いだす。


夏は好きだ。

しかし、今はある種のキズをうずかせる。


俺は夏が好き『だった』。


葛西さん。森下さん。


今年も、ヒマワリが良く咲いていますよ……。

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あの夏のままで プトー @puttoh

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