このゲーマーは森の中で力を手に入れたようです

 ドアを開けたその先に広がった光景にゼルトは目を疑った。


「うっそーん」


 そこに広がっていた光景は町でも村でもなく森の中。しかも、太陽の光が届きにくい深い森の中である。


 周りの気温は肌寒いぐらいの気温にプラスで不気味な感じでさらにマイナス3度というところか。いきなりその状態に立たされたゼルトは痛感し、後悔し、数秒前の自分をブン殴りたくなった。


「浅はかだった・・・何がお助けガイドだよ。あるわけないだろ。なぜならここはVRとかいう生易しいもんなんかじゃない。リアルだ。現実だ。ここに俺は存在しているんだ。」


 自分が生きてここに立っているという現実を信じられないでいたが、それでも信じるしかない状況にゼルトは深く深呼吸をしてもう一度今の自分の状況と周りの状況、そしてこれから自分が真っ先にするべきことを確認する。


「全く気付かなかったが服装が変わってる。ド〇クエでいう旅人の服的な感じの服だなこれ。それに近くに開けてくださいと言わんばかりの木箱。マイ〇ラのボーナスチェストかよ!」


 一人で色々ツッコミながら木箱を開けるゼルト。傍からみたらすごい痛い子だがここは異世界。しかも周りは太陽の光が届きにくい薄暗い森の中。嫌な気分を紛らわせる為のゼルトなりの対策だと思うだろうが残念ながら元の世界でもこんな感じだった。


「箱の中身はなんじゃろな~?」


 箱の中身は「お金に似たコイン15枚、自分の腕一関節ぐらいの短剣、食べれるかどうかわからないパン3個、古そうな手帳とペン、真ん中に綺麗な瑠璃色の宝石がはめられた腕輪」であった。


「よかった~!マジで手ぶらで森の中歩かされるかと思ったわ!」


 心から安堵したゼルトは箱の中身の物を冷静に調べ始めた。


「このコインは多分この世界の通貨だろうな。これにどれほどの価値があるかはわからないが大体のRPGでははした金は貰えない。よってこのコインに大した価値はないな。」


「次にこの短剣。初期武器にしてはかなりマシな武器だな。戦闘以外でも色々役立つだろうな。」


「このパンは食べられるかどうかわからないがカビが生えてなければ食べられる。トルネコ脳でOKだな!」


「さーて、この手帳とペンはなんじゃらほい?手帳はなんも書いてなくてただの手帳くさい。ペンにもなんか特殊な何かあるんじゃないかと思ったけどそうじゃないっぽいしなー。メモに使うか!」


「お待たせしました!最後はこれ!いかにもな装飾品!見た目のデザインも綺麗でグッドである!腕輪!着けずにいられない!」


 そういってゼルトは腕輪を左手に着けてみた。






「・・・・・・・・・・・・」







 しかしなにもおきなかった(ポ〇モン風)






「ふむ。これと言って何かしらの特殊能力やステータスアップなどのバフは無しか。」


 腕輪を外そうとしたときゼルトは異常に気づく。


「へ?腕輪が外れねえ。嘘!マジ!?ちょちょちょちょちょちょとーーーーーーー!!!!」


 大慌てで外そうとするが全くもって外れない。完全に一体化したかの如く腕輪は外れない。


「しまった!!これはドラク〇でいう呪われたアイテムか!!図ったな!シ〇ア!!」


 全く関係のない某赤い〇星の方に多大なる風評被害が行ったところでゼルトは少しずつ冷静になる。


「まあ、何かしらのマイナス効果があるようには感じないからこのままでいいか。とりあえずこの荷物を持ってこの森を抜けることを考えよう。話はそれからだ。」


 荷物をまとめたゼルトは森を抜けるために、その場を後にした。




 暫く宛てもなく歩いていると右側の草からガサゴソと音がすることに気づく。


 すかさずゼルトは音がした方向から隠れるように木の裏に身を隠す。


「よくネットではFPSプレイヤーはリアルで危険な状態に陥った時に動けなくてすぐ死ぬと言われていたが、意外と動くもんだな。で、音の招待はどちら様でっかー?」


 音のした方向へそっとのぞき込むと自分がさっきいた場所に大きな体格をしたゴリラが現れた。


「は!?嘘だろ!?ゴリラ!?しかも鎧着けてるぞ!!ウィン〇トンかよ!!無理無理無理!!序盤で出てきていい奴じゃない!負けイベですか?序盤の負けイベ展開ですか!?と、とと、とりあえず逃げねーと・・・」


 相手からは絶対に見えない位置をキープしつつ周りと足元を確認しながらゆっくりその場を離れる。音をたてずに第二第三の刺客にも警戒しながら逃げること5分。見事ゴリラを撒くことに成功する。


「木の枝踏んでピキッでバレるとか別の奴に見つかるとかはゲーム・アニメ・小説で腐るほど見たからな。流石に同じ轍は踏まんぞ。」


 元の世界で培った知識をいかんなく発揮して難を逃れるゼルト。このままひたすら真っすぐに進むこと10分。


「日が沈んできてるのか?周りがさらに暗くなってきて視界が悪い。」


 さっきよりも周りが暗くなってきていることにきずくゼルト。どうやら森の深いほうへと来てしまっていたようである。すぐさまもと来た道を引き返そうとするが・・・


「コンニチワ、ニンゲン。ドコエイクノダ?」


 自分が来た方向からドスのきいた低い声が聞こえてゼルトはサッと振り向く。


「お、お前さっきの・・・嘘だろ・・・?さっき撒いたはず・・・」


 あの時に撒いたはずのゴリラのモンスターが自分の目の前に立っていた。


「マイタ?アノテイドデマイタトイウカ。オトトシカクハケシタヨウダガ、ニオイデスグニワカル。」


 ゼルトは口には出さずに頭の中で思考を重ね始める。


「(クソ!臭いは盲点だった!それ以前に臭いを消す術がなかった時点で詰んでたわけだ。でもなぜだ?あの時気づいていたならなぜすぐに襲わなかった?そして片言に近いが人の言葉を喋るだけの高い知能を持っている・・・。そうか!!)」


 数秒の思考のうちにゼルトは一つの答えを導き出した。だが確定要素がない故に質問をゴリラにぶつけてみる。


「おいお前。なぜあの時すぐに襲わなかった?」


「コレカラエサニナルオマエニ、オシエテモムダダ」


「デスヨネー」


 あまりにも絶体絶命すぎて心が折れかかっているゼルト。


「(いくら考えてもこの状況を打開する術が今の俺にはない。ここまでか・・・)」


 何もかもを諦めかけた瞬間、腕輪の瑠璃色の宝石が強く輝き始めた!


「うわっ!なんだこれ!腕輪が光って・・うおっ!」


 宝石はより一層強く光を放ち、ゼルトの視界を遮った。


「またここかよ。」


 ゼルトはまたあの真っ暗な空間にいた。そしてその空間に渋い男の声が響く。


「おいお前。あの状況を打開したいか?」


「ああ?お、おう。打開できるならな。」


「なら選べ。この中からお前が最も欲しい力を一つだけな。」



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「エクシーディング・ザ・リミット」

 ・文字通り限界突破。自分で引き出せる身体能力の限界を超えたその先の力を使うことができる。要はものすごい身体強化スキル。効果は20秒もつが切れたら気絶するからよく考えて使うべきそうすべき。再使用に一日かかる。要は一日一回。




「パーフェクト・ステルス」

 ・この世の全ての生物から存在を認知されなくなる。だが神や幽霊やエネルギー体などの概念系の存在には効果なし。丸見え待ったなし。効果は30秒もつ。再使用に三時間かかる。




「ウルトラ・ヒール」

 ・ありとあらゆるすべてのキズや病気を治す。ラストエリ〇サー。再使用に一日かかる。要は一日一回。




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「おうふ。確かに状況は打開できるけどそのあとが厳しいなこれ。(なんで説明にブロント語が混じってるんだよ!!)」


 確かにスキル自体は超強力なものだが、どれも重大な欠点を兼ね備えている。あのゴリラを打開しても森から安全に脱出するほどの余裕がないのだ。


「こりゃもう腹くくるしかないな。あのクソゴリラだけは何がなんでもぶっ殺す!」


 ゼルトは決心した。死ぬならせめてあのクソゴリラは絶対に殺すと。


「エクシーディング・ザ・リミットにするぜ!!」


「よかろう。その力は今からお前のものだ。力の使い方はお前の着けている腕輪の宝石に強く念じるのだ。さすれば力を開放することができる。」


「OK!あとはなんとかするわ!」


 そういうとまた強い光に視界を遮られる。目を開ければあのゴリラの前に立っていた。


「よう。クソゴリラ。勝負だ。」


 ゴリラは感じ取っていた。ゼルトから発せられる決死の覚悟の意思を。


「グォアアアアアアアアアア!!」


 方向をあげながらゴリラが突っ込んでくる。


「あいつをぶっ殺せる力をよこせ!!エクシーディング・ザ・リミット!!」


 ゼルトが叫んだと同時に腕輪の宝石が輝く。輝きと同時にゼルトは全身と体の奥底からみなぎる強い力を感じた。


「ガアアアアア!!」


 ゴリラの強烈な拳が振り下ろされた。だがゴリラは違和感に気づいた。人を殴った感触がない。


「こりゃすげーや。本当にアニメの主人公みたいじゃん。俺。」


 ゴリラが声のした方向を振り向く。ゴリラは驚愕した。いつの間にか背後を取られていたことに。


「キサマ!ナニヲシタ!?」


「これから死ぬ奴に答えても無駄だ。時間がないんでね。一撃で殺す。」


 そういうとゼルトは短剣を引き抜き、ゴリラに向かってロケットの如く全力で突っ込んでいく。そのスピードは普通の人間では目に追えるものではなかった。


「いくら体を鎧で纏っててもなぁ!!眉間がら空きなんだよッ!!」


 ズドン!!


 斜め下から飛ぶように突っ込んだゼルト。短剣はゴリラの眉間を完璧に捉え、深々と刺さっていた。


 ゴリラは眉間に刺された衝撃で宙を舞い約20メートルほどのところで地面に落ちた。


 ゼルトは見事に着地を決めることに成功。ゴリラのもとに急ぎ、生存確認をする。


「おしっ!死んでんな!ざまーみろ!クソゴリラ!」


 そして、20秒が経過したことによってゼルトのスキルは解除された。それと同時に全身に強烈な倦怠感が襲うと同時に意識が一瞬にして途切れる。


「これ、えっg・・・・。」


 ゼルトは意識を失い。その場に倒れた。

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ゲーム脳は異世界でも健在である! はまてよ @hamateyo55

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