かくれんぼ

まっちゃくりーむ

第1話

朝5時30分。秋の朝は少しまだ外が暗い。それに比例するように水道から流れ出る水も冷たい。

「つ…つめたい……」

いつものモコモコのヘアバンドで髪に水がかからないようにして思いっきり顔を洗います。

顔全体に氷が刺さってるような感覚を覚えると「冬になったね〜」って思うんだけど今は幸いにもまだ秋だからそれもないんだよね。

顔を洗い終わってからする事はカラコンを入れること。色はハニーブラウンで。入れ終わったら次はつけまして…。

自分を着飾っていた少女の手がふと止まる。

毎朝毎朝の繰り返しで…同じ日を踏み外さないように歩いて…。昔の私は違ったのに…。


ピピピピ


静かな家に響き渡る弟の目覚まし時計

「…え?私30分もぼーっとしてたの?」

最近よくこんなことあるんだよね…。多分原因ってあれでしょ?学校でしょ?分かってるんだけどなぁ…。

手をフルに動かして自分を着飾っていく私。

最後にきゅ〜って桜色のリップを塗ったらフル装備完了。

「もう…あと10分しかないじゃん!!」

しょうがない…。今日は巻くのやめて、アップのお団子にしてケープでまとめてシュシュで飾り付けしよう。ってかしないとダメ。

ほとんど教科書がはいってないスクールバックの中にケープのシュシュを投げ込んで洗面所から狭い廊下を50m走7秒並の速さで駆け抜けてローファーに片足を突っ込む。

「萌音〜!朝ごはんは!」

「要らないよ!」

「また、そうやって抜いて、ダイエット??」

後ろから自称栄養士のママさんの声が聞こえるけど一々気にしてたらほんとに学校に遅れる…。もし遅れたら何言われるんだろう…。

「萌音…?聞いてるの!?」

耳元でのキンキン声で我に返った。

また止まってた…どうやら私は二つの事を一緒に出来ないみたいです。

「行ってきます!」

まだ何か言いたそうな栄養士を閉じ込めるようにしてドアを閉める。

「いつも通り家でれた〜…」

いつもと同じ道をいつもと同じスピードで。私の学校って一貫校だからメンツも全然変わらないし通学路もずっと一緒。もしかして私の足跡ついてんじゃないの??ってたまに後ろを振り返ってみるけどあるのは昨日だけ。

「萌音〜!おーはよっ!」

私が唯一素の私でいられる時間はいつもより早くに終わった。

さぁ、いきますよ?背後に振り向く一秒で笑顔を作って声を作って、

「おはよう〜」

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