会話
財布オッケー。髪オッケー。服オッケー。携帯持った。よしっ。
「おかーさーん、ちょっと新しくできたカフェ行ってくるー」
「昨日も行ったんじゃないの?」
「今日も行きたいの。てか、用事ある」
「そ、行ってらっしゃい」
「いってきまーす」
こんにちは皆さん、小夜です。これから、戦場に行ってきます。目指すは、暁海翔のいるカフェ『Love and Peace』。ずんずんと道を歩く。緊張はしない。だって昨日の夜、十分したから。あとは頑張るのみだ。
カフェが見えてくる。数人の女子大生が入っていく。小夜もそれに続く。
「いらっしゃんませ。あ、昨日も来てましたよね。ありがとうございます。今日は1名様ですか?」
「はい」
「ご案内します」
昨日の金髪のお兄さんが席に案内してくれる。ここは接客が丁寧でとてもいい。といっても昨日今日と二日間しか来てないけれど。席に座り、机の上に置かれた水を飲む。バニラアイスと紅茶を注文する。
今日は海翔いるかなぁ。そんなことを考えながら、注文した品が来るのを待つ。
「おまたせいたしました」
バニラアイスと紅茶がきた。
「ありがとうございます」
そう言って店員さんの方を見たら海翔だった。海翔は私と目が合うと、口をもごもごさせ、
「またきたんだ」
「うん」
「あのさ、俺そろそろバイト終わるから、そのあと少し話をしよう」
「いいよ、待ってる」
「それ食べ終わったら、先外出といて。店、オープンしたばっかで混むから」
「うん、わかった」
そう言い海翔は厨房へ戻っていく。私は急いでそれを食べ、店を出た。
店を出て数分後、海翔が出てきた。私から口を開く。
「ひさしぶりだね」
「うん、ひさしぶり」
「元気にしてた?」
「うん、小夜こそ」
「私はいつでも元気だよ」
「そっか」
「あのさぁ海翔。いままでどうしてたの?」
「いきなり?」
「うん、いきなり。だって気になるじゃん。卒業まじかになって転校とか普通はないもん」
「まぁ、そうだよな~。そうなるよな~。そんなことよりももっと別の話しない?今はあんまりそういう話をしたくないんだ」
「話したくないってこと?」
「ま、そういうこと」
「ふーん、そっかぁ」
「あのさ、安城さん、元気にしてる?」
その一言を聞いて一瞬背筋が凍った気がした。やっぱりまだ和歌子の事好きなのかな。そう思ってしまう自分が嫌だ。
「昨日、一緒にきてたよね。まさかいるなんて思わなかったからびっくりした」
かまわず、海翔は話を続ける。私は、おもわず、
「うん、元気だよ。何?もしかしてまだ和歌子の事が好きなの?」
「いや、そういうわけではなくて……。ただ、気になって」
「そっかぁ。まだ好きなのかぁ」
「い、いや、だから違うんだって」
「そうなんじゃん」
知ってるよ。君が嘘つくときの癖くらい。そうやって最初に出る言葉が重なっちゃうんだ。
「そうじゃないんだって、別の事、別の事話そう」
そう言って無理やり海翔は話題を変えた。やっぱり和歌子の事が好きなんだろうか。やめよう、そう考えるのはやめよう。
「小夜は、今どう?ちゃんとやっていってる?中学生時代みたいなことしてない?」
「私何かしたっけ?」
「多分特に何もしてない」
「何もしてないんじゃん」
「まあね」
「海翔は?何かあった?面白いこと」
「面白いことってなんだよ」
「まぁ、いろいろ」
「んー、そういえば、この前、佐々木先輩がさ……。あ、バイトの先輩ね。あの金髪の人。その人がさ、店に彼女連れてきて自慢してたんだよ。可愛いだろって感じで。そうしたらさ、その彼女、先輩の話そっちのけで、スイーツ食べることに夢中になってたわけ」
「わかるよ。美味しいもん、ここのスイーツ」
「だろ。で、先輩さ、ズーンってなってた。なんかよくわかんないけど、スイーツに負けた~みたいなこと言って」
「ちょっといつものあの店員さんからは想像できないや」
「正直、俺も小夜の立場だったら想像できないと思う」
「てか、普通にいつもあの爽やかな先輩が彼女の前でデレデレとかマジ信じたくない」
「デレデレなんだ」
「うん。こっちが恥ずかしくなるくらい」
楽しい。私の好きなたわいもない普通な会話。こんな幸せな瞬間。しかも大好きな海翔と一緒。
キミに会いたい 白光青龍 @kerorinn0908
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