帝都つくもちぎり

作者 佐々木匙

91

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★★★ Excellent!!!

『がたり』『かさね』『あつめ』と続く『つくも』シリーズ。

大久保、関、翠、菱田君と、おなじみのメンバーは今作も健在。
昭和初期のレトロな世界観を描き出す安定した筆致は一貫したもので、安心して読めます。現代語とわずかに異なる台詞回しや、懐かしい事物の描写も楽しい。
シリーズの中ではホラー味が強めですが、怪異たちの佇まいはやはり恐怖より切なさが先に立つ。今作では少し変わった手触りの怪異も登場し、その点でも充分に楽しめます。

そして最後に広がる風景は、美しい。
本作は、ぜひシリーズ他作を読んでから読まれることをお勧めしたいです。

★★★ Excellent!!!

戦前、帝都東京にて。
臆病な文士、大久保が体験し物語る怪異譚。
レトロで柔らかな風合いの文章が心地よく、
この世とあの世の曖昧な境へと読者を導く。

亡くなった恩師の全集が編まれることとなり、
遺稿整理と悪筆解読に駆り出された大久保は、
未亡人となった妙子の傍らに怪異を見出だす。
折しも大久保も「何か」に憑かれていて──。

帝都つくもシリーズは各々単独でも読めるが、
本作は『つくもがたり』を先に読むほうがいい。
当初は怯えることしかできずにいた大久保が
鏡の中の己を見つめ、雨上がりの虹を望むのだ。

毎日更新を楽しみにしていた。
完結したのが何だか寂しい。

★★★ Excellent!!!

大久保純という男がひたすらにかわいい話です。このやろう。こんちくしょう。
意外と(匙先生の小説としては意外と)ネタバレに弱い構成だと思うので諸々は伏せますが、少し読んでクソ重ホラーかなと思った貴方。正しい。正しいけど大丈夫。
つくもがたり(シリーズ最初の長編)を読破しておくとウン倍面白いと思いますが、逆にこれを読んでからアレに挑むと、アレの結末がおそろしく刺さるようにも思います。どっちからでもいいです。

★★★ Excellent!!!

語り口の軽妙さから来るものでしょうか。
物語に漂うレトロな薫りを受けてでしょうか。

読めば読むほど、文の連なりから滲み出る「懐かしい場所に帰ってきた」という安心感と、確かに思い出の場所であるはずなのにどうしても拭えない「自分は異邦者だ」という隔たり。
そんな両天秤の心象を抱かずにいられない、近くて遠い蠱惑的な超常のお話でした。

作品紹介から察するに姉妹作にあたる物語が他にもあるようですが、私はこの作品に初めて触れて、それだけでも充分な魅力に中てられてしまいました。
作中作にあたりそうな「つくもがたり」も折に触れ読んでみたいものです。

現在までに紐解かれている物語の中では、特に鳥の話が私の心の琴線を高く強く掻き鳴らしてくれました。
超常との距離感が絶妙な、日常と非日常の境界が溶け合った様は素晴らしく、そして魅力的なものであります。