戦前、帝都東京にて。
臆病な文士、大久保が体験し物語る怪異譚。
レトロで柔らかな風合いの文章が心地よく、
この世とあの世の曖昧な境へと読者を導く。
亡くなった恩師の全集が編まれることとなり、
遺稿整理と悪筆解読に駆り出された大久保は、
未亡人となった妙子の傍らに怪異を見出だす。
折しも大久保も「何か」に憑かれていて──。
帝都つくもシリーズは各々単独でも読めるが、
本作は『つくもがたり』を先に読むほうがいい。
当初は怯えることしかできずにいた大久保が
鏡の中の己を見つめ、雨上がりの虹を望むのだ。
毎日更新を楽しみにしていた。
完結したのが何だか寂しい。