Q.もう一度異世界で人生をやり直しますか?A.そんな事より選択肢チート能力を寄越してください(切実)

春巻 幸星

〜出会い編〜第1話(前編)

視界が真っ暗だ。仕事から帰ってきたことだけは覚えているのだが、それ以外の記憶は曖昧だ……。

確か、家に帰る途中に酒を飲んで、酔っ払って、帰りに倒れているお婆さんを助けたんだっけ?それから、何度も電柱に頭をぶつけながら、家に帰ってきた。それから、トイレで吐いて、風呂に入ったはず…。その後、飯食って…。

あっ。そう言えば、ご飯食べている時に眠くなってしまい寝てたんだと思う…。

そう言えば、背中が冷たい。フローリングだからかな?いや、確かカーペットを敷いてたはず……。確か、今日朝、飲みかけのお茶を下に置いてたような……。

ん?待て。そうなると、もしかして……。

頭に嫌な雲が渦巻く。

「お茶、ごぼしてるよな!?」

大声を出しながら、体を起こす。

「ちょっ!急いで拭こって、え?ここどこ?」

普通、目の前にはテーブルがあるはずなのだが、目の前にあるのは、木だ。

言うなら、周りは木しかない。もしかして、いやもしかしたらじゃなくてもここ森だ…。

「ちょっ。俺、酔ってここまで来たのかな?いや、こんな所近くにないもんな……」

頭を思いっきり掻く。ついでにこれは、俺が悩んだ時に出る癖だ。よく、仕事場でこれをして怒られている…。いや、今そんな事関係ないか……。

「で、ここどこなんだ?富士の樹海か?いや、そんな遠い場所行くはずないか…」

見渡す限り、本当に木しかない。あと、分かることは、ここがお花畑だと言うこと。

目をやる所々、花と木しかない。どうやら、本当に意味のわからない場所である。

「はぁ……。なんだよ、ここ……。」

混乱する頭をどうにか落ち着かせようと、ズボンのポケットに手を入れる。いつも、落ち着かない時用に、タブレット型のミント味のお菓子を入れている。

「ん?あれ?ない!?」

立ち上がり、ポケットの中身を見るが、何も入ってない。しかし、右側のポケットになにかある感触がして、手を入れてみる。

何かを触り、取り出してみると、それは鏡だった。

「俺、鏡なんて持つナルシスト主義なことしてたっけ?」

そんな事を言いつつも、人間の反応として当たり前のように鏡を除く。

「え?」

そんは間抜けな声が口からこぼれた。その理由は……。

鏡に映るのは、今の自分の容姿とかけ離れている姿の青年がいる。

歳は多分16の頃。髪の毛は真っ黒で肩にかかるほど長く、瞳の色はあの頃流行っていた、カラコン(ルビー色)を入れている。顔も整っていた。

そう、これは、若き頃の自分の姿だった。

「は?どういう事だ?」

とうとう頭の記憶容量が足りなくなってきた。もう、タイムスリップしたとしか思えない。でも、そんな、非現実的な事が現実世界で有り得るはずがない。なら?

俺がある一つの仮説が頭の中で建てられ、口に出そうとした瞬間、その仮説を肯定するようなことが起こった。

「助けてぇぇぇ!」

森の奥から女性の声と何かの足音が聞こえる。どうやら、こちらに向かってきているようだ。

つばを飲み、そちらの方を凝視する。

すると、徐々にシルエットが見えてきて、その姿までハッキリしてくる。

「ちょっ!」

そんな声を出した時には、もう、その姿は丸見えになっていた。

5mはあるイノシシ型のバケモノに、白色のコートを着た銀髪の女の人が追いかけられていた。

「そこの旅の御方ぁぁぁ!助けてぇぇぇ!!」

「はぁぁぁ!?!?」

僕はその場から動くことが出来ず、立ちすくんでしまう。

これでは、二人ともバッドエンドになることは分かっているのだが……。

こんな考えてる中でも、イノシシ型のバケモノは俺に向かって突進してきている。

もしこのまま逃げなかったら、あの赤色の角のペンキ代わりにされるのだろう……。

目を瞑り最善策を考える。暗闇の中、心做しか光が見えた。急いで目を開くと、そこは、真っ白な世界だった。

『どちらにする?』

「は!?」

何処からか声が聞こえた。女性の声だ。優しくも、威厳がある声。

「『生きることが出来る』または『チート能力を受け取る』選んで。」

「え?」

また、声が聞こえる。それと、同時にカウントダウンが始まる。

『生きること』か、『チート能力』……。

もう、迷う必要なんてなかった。

「チート能力をくれ!」

『分かった』

少女の声を最後に、世界は彩りを取り戻した。


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Q.もう一度異世界で人生をやり直しますか?A.そんな事より選択肢チート能力を寄越してください(切実) 春巻 幸星 @Mikano0707

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